第33章 これは終わりではなく始まりの刻
確信。完全にヨミは春日家当主の間の地下にあるという、コトリバコの件に関わっているって事。
諦めのような声色に周囲がざわつく。私達はまだ見ていない……のに、その言葉は肯定であるという事。
フッ…、と笑う悟の横顔を見て私もヨミの方を追って向く。
「いや、まだ実物は見てはいない。けどコトリバコによる実害は出てんだ。今回なんとか体内の負傷についてはハルカが治したけれど…あの呪いは普通じゃない、微力ながらも当てられて簡単には解呪出来ないんだ……コトリバコの呪いを解呪出来る人、この中に居る?」
ざわざわと囁く死者の声は、まるですすきが風に触れてぶつかるような音に似ていた。
その囁く声の中、たくさんの女達の数名が手を挙げる。その人達は怪我や病だけではなく、呪いを吸い取る事に特化した人らだった。
だからなのか、まだ未成年のような若々しさを感じる彼女らは契約した人から呪いの身代わりを受け、死んだんじゃないかと思えてしまうくらい、この空間では若年層に入る人……。
「……よし。聞く前にまずはマリアの解呪が先。じゃあ手を上げてる僕に一番近いそこの子、治して貰って良いかな?」
"そこの末裔も同じ意思であるというのなら…"
『うん、同じく治して欲しいから頼んでも良い?』
数人から一名選ばれた子。声の小さなその人は小さく頷く。袖に隠れた手をそっと出してマリアの方へと向けているのを見て、悟は「じゃあ、解呪をお願いねー」と頼んでいた。
「……で。ハルカも歌姫も龍太郎も、きちんとこの話は耳に入れときなよ~?」
春日家のひとりがマリアに近づき、彼女の腹部に触れていた。その後、元居た場所へと戻っていったのを目で追ってマリアの腹部を見れば、渦巻くような薄い呪いの痕はもう見えなくなってる……。
負傷は私も触れて治せるよ?呪いによる負傷だって一部を除いては治療が出来る。基本的に蓄えた呪力で対象者の正常へと近付ける治療…。
治療時に解呪出来る種類は私の場合は限られているけれど……。
すごい…、解呪担当の人も中には居るんだ……。
道具を使わず触れて吸い取ってしまったのかな。あの子とは後で仲良くして呼び出せるくらいの仲にしておこうか…と考えていればトスン、と頭上からかなり手加減をした手刀。見上げればへの字口の悟。
「もー、ちゃんと人の話を聞きなさいっ!」
『くっ……、は、はあい…』