第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「ハルカ…、せっかく五条をふざけないようにしてもらった所悪いんだけど、またいつものがぶり返してるわよ…?」
『すいません、監督不行き届きですね!某映画の挿入歌を歌われる前になんとか致します!』
「うん…頼むわ……」
額を指先で抑える歌姫。頭痛の原因はただいまフリーダムになってピアノ演奏部分を口でチンチロ言ってる男。ここを氷の城に見立てないで欲しいから早く意識を現実に戻してやらないと……!
『……いやいやいや!確かに子供が出来たっつー報告の話もあったけどっ!それよりも今は大事な話があるからそこ盛り上がらない!
悟!歌わずにちょっとすっこんでて、今そのフリーダムは要らないっ!』
「……そのブレイブは?」
『要らない!』
僅かに正気になり、歌もキャンセルした所で彼の手を引っ張って鎹から遠ざけて離す。
そして先程まで悟が居た場所に立ち、鎹と対面した。周囲には祖母やら他の親戚、私の血から遠くの先祖達が静かにこちらを向いていた。
『鎹、それからヨミに対して聞きたい事がある』
囲んでいた人達が一部を残しサァ…と下がっていく。下がらなかったのは私と対面している鎹、そして数歩先にいる祖母。鎹は私を向いたままに表情全てを隠す布を、言葉を放つ事にひらひらとさせていた。
"ほう、言ってみろ"
『(パワハラ臭い口調だなぁ…)初代の鎹が関係するかは分からないけれど今回、領域に来た目的は主に鎹。そして私の婆ちゃんであるヨミ……あんた達にこうして直接聞きたいんだけどさあ~……』
今回被害を受けてしまったマリアを見、それから私のすぐ後ろまで近付いてきていた悟を見上げて。
ぶすくれて口をひょっとこみたいに尖らせてた悟は一度、咳払いをする。その後には非常に真面目な表情になって、祖母……ヨミへと向いた。
「単刀直入に言う。なんで春日家の地下にコトリバコがあるんだ?」
その一言にあちこちで囁く声がぴたりと止んだ。沈黙の中、祖母は僅かに肩を降ろし、悟を見上げてる。
"………見たのか…"