第5章 "好き"が止まらない!
34.
いつもはトレーナーやパーカーでだらだらと過ごしていたけれど、こういう合コンの場でそんな格好してられない。もっとよそ行きのちゃんとした服に制服から着替えていく。
襟がぶかぶかとして緩く、他は体型に合わせてぴっちりとしたワンピース。バックスリットが入っている。ストッキングは制服時に履いてるのをそのままにしていつもより丈の短い…ショートブーツ。
ワンピースの上に薄手のパーカーを羽織りショルダーバッグを掛けてまとめ髪をする為に鏡を見た。
……よし、化粧崩れも無い、行こう、戦場へ!悟を私の中から忘れさせてくれる人がどうか見つかりますように。
私は鍵を掛け、そのまま速歩きで進んでいった。
「あれ?みたらい?」
『おわっ、くっ…釘崎!?』
寮から出た所で釘崎に見つかってしまった。幸いにもひとりなのがありがたい話。けれども見つかってしまったのは不都合だった。
釘崎は足から天辺まで見て親指を立てる。
「デート…だな?そうですよねーばっちりキメてますもん……
この短期間!いつ相手を見付けた…っ!?」
『えっと、その…デートではないと言いますかお友達と夕食といいますかすみません!遅刻するんでまた明日!どうかこの件は内密に!じゃね!』
深く掘られたら敷地内という事もあるのでどこに誰の耳があるかが心配だったので私は逃げる。そもそも時間もギリギリ。
後ろから"あっ逃げた!"という釘崎の声が聴こえたけれど、明日こっそりと説明するから今は急がせて貰った。
駅に行きホームで電車を待つ。時間帯的にも人は多い。携帯を取り出して時間を見る、この調子なら時間に間に合うとは思うけれど……。
電車を待っていれば人が多い中に紛れる人ならざるモノもいる。横目で見れば人々の肩から肩へとぬる…ぬる…と、私目掛けて近付く呪い。右手を左肩に乗せ、掻いているふりをしながら、反転術式で細めの髪を呪いへと突き刺した。
まだ反転術式が普通の人に見えるかどうかは私は知らないからこうするしかなかった。
"グギャアッ…"