第33章 これは終わりではなく始まりの刻
以前は女子を成せ!とか急かしてた割に男の子だからって否定されないのは良いんだけどさあ…。
どうして私も悟も知らない、お腹の子供の性別を疑問もなく、触れることもなく男だと言い切ったんだろう?周囲の先代やら親戚達が"決まる前であれば女子に出来たものを…"だとか"今なら多少、性器が残るが女に出来るかもしれぬ"とかきゃいきゃいと勝手に盛り上がってる。
"五条家の跡取りが出来たのなら次は春日家の跡取りの番ね!"とノリノリに次に期待している人もいた。
まさかのコトリバコについての質問をしに来たっていうのに。いい意味でのこんなはずでは……という事態にたじたじになっていると、腕をつん、と突かれ、振り向いた先に歌姫。耳打ちでもするのか私の頭に顔を近付けた。
「……ハルカ、あんたまだお腹の子の性別を知らないんじゃなかったっけ?」
『はい……私ら、まだ性別、知らないんスけど……』
周囲に一族が居る中で近くまで来た歌姫がぼそ、と呟き、私は大きく頷いた。
このやり取りが聴こえたのかどうかは知らないけれど、どこでだって変わらない態度の悟はじわじわと私という末裔から、更に引き伸ばされた末裔という立場の存在を喜ぶ人達を、術式を使うことなく手で「邪魔でーす」と人払いを軽くしていく。
「喜んでくれるのは良いよ?でもなんで領域内来て速攻ネタバレしてくんの??僕らリアタイ勢、まだ性別を知らなかったのに…担当医すらもこれからチャンスありますよって言ってたのにさ?」
"知らないのなら丁度良かったじゃないか、その腹の子は男子だ。この領域では流れる一族の血から判断が可能なのだ。次ははっきりと分かる前に来れば、女でなくとも無理に性別を女に変えてみせよう。
大丈夫、式髪の破片をを脳に流し込めば肉体形成を徐々に変えられるものだ"
「男の娘とかふたなりは可哀想でしょっ!ヤなこったい!ありのままでいいってエルサも言ってたもん!」
"なんだ、えるさ、とは。おいハルカ、この男は他所の女の名前を吐いたぞ?"
……ツッコまないからねっ!絶対にツッコんでやるもんか!そう決めて悟と鎹から顔をそらす。
領域に来る前の強張ったような決意の空気がまさかの性別のネタバレを食らい、荒れてる悟。振り返ればマリアも龍太郎もこのやりとりにスペースキャット状態、悟の技でも食らったみたいな顔をしていた。