第33章 これは終わりではなく始まりの刻
……これは伏黒の式神の調伏に近いもので、私とその一族の人が領域内で互いに理解をしないといけないのだけど。皆、禪院家に対して偏った思考と恨み妬みを持ってるから非常にめんどくさいってワケでお近づきになりたくない。母も大暴れするわけだ…私も暴れたくなったもの。
悟に『それで?』と続きを急かす。彼は嫌な空気漂う部屋に顔を向けていた。
「婆さんの頃にはきっと、春日家の人間も少なかっただろうね~…だからヨミよりも前の世代からその悪習は受け継がれていたんじゃないかって僕は思うんだ」
「……ヨミ様よりも前…?」
『初代の鎹でも喚ぶ?彼女ならば色々把握しているんじゃない?』
歯を見せて笑う悟は人差し指で私の額にとん、と触れた。
「ヨミよりも前っつっても初代からとも言い切れない、分からないからひとりひとり喚び出すのはキミの呪力がもったいない。だから今こそ、領域内に行くべきなんじゃないかなって僕は思う、そう思う、そうじゃないかな~って思うんだ!…って思う!」
『曖昧にも思いすぎ~……』
領域内にこちらから向かうのは久しぶり。最後に行ったのは死んだ時だったっけ。あれ以降はずーっと領域からこっちへ来いや!と呼び出しばかりで、ふと自身の髪を片手で梳く。
……白髪部分…、半分行くくらいかな。
任務に行くことが以前よりも更に少なくなってしまって、また日常的に離れた所のものを引き寄せたりするのに"怒髪天"で式髪を利用していた。そうやってちまちま呪力を消費していたからと少しばかり白髪具合をあまり気にしてなかった…。
死んだら元も子もないんだから、自覚しておかないと、と戒めながら髪から手を離すとサラサラと指から流れていく髪。
『……多分行けるとは思うけど』