第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「じゃあ、他所から貰ったコトリバコじゃなく自家製呪物でビンゴだ。その時にはせっせと敷地内で作ってたね!
その家畜だとかペットだとかがせっかく買ってきても急に居なくなった…だとか、すぐに食卓行きだったとかで生きた状態で保たれちゃいないはずさ」
『で、なんで急に呪物の呪いが牙を剥いたわけ?明らかにマリアだけに症状が出てるでしょ?』
祖母は死んで何ヶ月も時間が経過してる。女はマリア以外にも五条家からこちらへ派遣されている人達がいる、なのにマリアたった一人だけ何度も呪われてる。
ああ…龍太郎がこっちで寝ていて、一緒に過ごしているからその際にって事なのかな……?
「うん。お婆ちゃんが隣の部屋で地下に繋がる糸…式髪製のパスから呪力を送り封印を続けて、突然ぽっくり逝っちゃったからハルカに取り扱いをどうすれば良いか、なんて伝える暇なんて無かった……」
悟は「あっ、これは僕の予想だよ?」と言葉を付け足す。
そりゃあ誰も知らないんだ、他人に積極的に関わろうとしなかった祖母。一番側に居たであろう龍太郎もこのようになにも知らず、娘である私の母も早々にこの家を飛び出してる。
祖母がこの家で何をしていたか、その事についてを知るのなら祖母に直接聞いたほうが良いでしょ…。
彼の話を耳に入れながらも、私の脳裏には聞くとしたら祖母か、それとも一族の始まりである鎹か…と今回の件に対応する人物を狭めてる。
「それは面倒くさかったのか、それともハルカが家に住み込む前提じゃないからなのか。それも想像上で分かんないけど。どっちにしろ領域内に婆さんは収まってハルカの"髪降ろし"で降霊出来るんだから、いつでも伝える時に伝えられたはずだ。時間だってキミが死んでしまった時にたっぷりあったんだから」
『まあ、うん……でしょうねー…。
初代と婆ちゃんと母さんは良く降ろしてたし…領域内、色んな話はしたけれど、コトリバコに関する話題なんて全然耳にしなかったし……』
そもそも祖母のみが春日家地下室のコトリバコに関わっていたとも限らない。もっともっと昔から当主となる人達が作っていたのかも。その人達に聞けばこの件の真相は明らかになる。
もちろん、領域内で春日の一族の名前やどういう呪術を使えるかを把握すればここに喚び出すことは可能だけどさ。