第33章 これは終わりではなく始まりの刻
流石は教師をしているっていうのもあり歌姫の説明は知っていても、そういう感じであるとおさらいが出来る程にとても分かりやすかった。
「……なるほど、だいたい理解しました」
初めて聞いたふたりも納得し、情報がこれで共有できるってわけだ。背筋を伸ばしてマリアをまっすぐと見た歌姫。
「それでね、そのコトリバコの呪いは体内に当てられるわけ。
報告されている事例だと、内臓を捻られる痛み、酷い場合はねじ切られた苦痛とそれに伴った吐血。そして最終的に解呪出来なければ死に至る……、ある程度のランクからは被呪者から解呪は不可…助からないとも言われるわね」
その歌姫のコトリバコの説明を聞き終えたマリアは黙りこむ。代わりにその彼女に視線を向け、悟を向いた龍太郎が膝立ちで「ちょっと待ってください!」と声だけは荒げているものの手は控えめに挙げられていた。
「私がヨミ様に仕え始めた時からヨミ様を主として側に仕え続けましたが、私はヨミ様が呪物…コトリバコを扱うそのような場面を見たことがありません!」
何年もひとつ屋根の下で過ごして来て、見たことがなく信じられないという龍太郎は声を荒げる。まさか、日々を過ごす生活の中に呪物が存在したなんて、と本当に何も知らなさそう。
そんな必死な彼を喉で笑う男がこの場に居た。皆の視線が悟に向く、悟はクククッ、と頬杖をついたままに笑っていた。
「そりゃあお天道サマの下、堂々と呪物なんて弄くる事も作ったりもしないっしょ。ここの婆さん、外に出ないって有名なんだ、こそこそどこかで作ってたんだろ。そういう呪物ってのは堂々と作ったら意味はない、人前で作るのはいずれ製作者がバレるのを理解出来ない、頭の悪い呪詛師くらいさ!
あ、そうだ。家畜とかなんかを仕入れてきてとか過去になかった?特に雌って指定した時とか」
人差し指を立てて質問する悟に、膝立ちだった龍太郎はゆっくりと腰を降ろしながら「何年か前に……」と俯きながら小さな声で応えて。それに悟は笑窪を作るほどに笑顔を見せながら頷いた。