第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「んー…そんな所、だけど……実際に僕も見ていなくてもそれが何かは検討はついてるんだ。呪いを受けた後の症状も微量であれ一致するしね。
龍太郎が知らず、そして勿論本来ここに住み込み家を継ぐべきだったハルカは僕んとこ嫁入りしてるし、この家の当主としての受け継がれるべき知識もない。書物にしろ書庫にあるものはある程度読んだけど特別、呪具や呪物に関したものは無かった……。本来、代々受け継がれていく家ってのは何かしら呪具を受け継いでいくものだ。非術師でいう、骨董品のように後の世代を助ける為にね」
……そういえば、五条家所有の呪具はいっぱいあるんだよーなんて悟も言っていたな…、と悟の話を思い出しながら静かに彼の言葉を聞く。悟は質問していた歌姫から龍太郎へと顔を向けた。
「いや、受け継ぐ・受け継がないの問題じゃないか。むしろ虫食いのように大事な知識が欠けてたんだ。目を通しただけでも何かの違和感はあった……。
龍太郎、リベルタ以前に泥棒でも入られた事とか、婆さんが当主のみの書庫だとか、隠してた書物とかそういう物は無い?」
僅かな間。その間皆の視線は龍太郎に注がれる。彼は少しだけ目を泳がせた後に首を振った。
「特には……本当に身の回りの世話ばかりでしたので」
「ふーん。ずっと婆さんがこの家から離れないのは呪い避けの呪術の為だけって聞いてた?」
「そうとしか思えませんでしたから……。
春日の女性は呪いを寄せる、ヨミ様はあまり祓う事に長けておらず出かける理由もないと聞き、ずっとこの家で過ごされておりますし。それ以外に家から離れない理由は疑問には思えず……」
「ところでマリアには身体に異常が出てるのに、キミにはなんの異常もないの?一緒に過ごしてるんだろ?」
「はい、そうですけれど……」
今、この部屋に集まってる皆がふたりのやりとりに集中していれば、その主に話し合うふたりが黙れば完全に静かになる。
悟の質問攻めに龍太郎も顔をしかめ悟に疑問を向けていた。
「あの……俺の事を疑っていますか?」
その一言は誰もが悟が彼を疑ってるから出たんだと、当然の返しだと思っただろうけど。悟はにぱっ!と元気な笑顔を見せて両手の平を顔の横に出し、やけに明るく振る舞っていた。
アップダウンが激しいなあ…。