第33章 これは終わりではなく始まりの刻
突然なにを言い出すかと思えば…!
この場で堂々と聞く話題じゃない、と肘で小突く。デリケートな話題だぞ、この人の多い中での質問は!私に脇腹を小突かれた彼はなんだと言いたげな口元をして、アハ現象テストのようにゆっくりと笑顔になっていく表情。おい、絶対ロクでもない"なにか"を企んでるでしょ!
彼はいつものように空気を読まず、声のボリュームを上げていった。
「龍太郎君の寝室にマリアの痕跡があるって事はそういう事じゃん!嘘はいけないねっ!男と女、一つの部屋で夜を更かしてくっつったらさ、」
『おい馬鹿やめろ』
「昨晩はお楽しみでしたね?パティーンだね!ねー、松達も夜はこそこそマリアが龍太郎の寝室に向かっていったり、夜な夜ななんかこの部屋近辺からぬっちゃぬっちゃ水っぺぇ音とか」
「オイ五条っ!」
私が止めようと服を摘んで揺すっても口はどんどん暴走していく。歌姫もスイッチが入り始めた。
悟の矛先が向けられたおふたりはやや俯きがちになってきて否定する隙が与えられない中でおそらくは当たりであろう、悟の考察が暴露されていく。
当の本人でなくても可哀想で居たたまれない。これはヤバイ、と座ってた私は立ち上がり、彼の背後に立つ。
「くぐもった声で子犬みたいな……って、どったの?ハルカ~?触発されてイチャイチャしたくなった?」
『……春日家の庭がさあ、寂しいだろうから植木をしよっかなって思ってんだー』
よいしょ、としゃがんで悟の背後から胴体に腕を回す。「ンフッ」とちょっとはしゃぐ悟は胸に回した私の手に触れて擦っていた。
「やだ、もー!あんなに恥ずかしがってた割に我慢出来なくて公然でイチャイチャしたいの~?するなら好きにしても良いけどー……
ところでなんで今、植木の話したわけ?」
『……デリカシーのない男を庭に頭から植えようかなってさ?庭に地図記号の消防署みたいな黒い植木あったら面白いじゃん、こうるせぇ口も地面の下でやっと塞がるし』
「これはマズイ、プラズマズイ!」
私の手を撫で回す手は即座に離れガシッ、と座卓にしがみつく。ようやくイチャイチャタイムではないと察して、玉砂利からその長い脚が天に向かって伸びる……というスケキヨの刑を嫌がってるようですね…?