第33章 これは終わりではなく始まりの刻
322.
大広間でとりあえず……と皆が揃った状態で座り、全員の元にお茶が淹れられて(五条家からの使用人トリオは部屋の隅で立ち、待機してる)腰を落ち着かせた所で。
頬杖をついた悟が龍太郎の方を向きながら、閉じられた襖の方を指差していた。
「龍太郎、そこの襖の向こうって何の部屋?」
「えっここの隣、ですか?寝室に使ってる部屋、ですけれど……」
「ずっと寝室として使ってんの、そこ?」
「いえ、ヨミ様が亡くなられて以降からですね、ヨミ様の生前時の俺の自室は物置として使っていますが……」
ふーん、と返す悟。
……物置、ね。確か龍太郎はアイドルオタクだったから趣味の部屋なのでは?とじとー…と龍太郎を見た。悟が急に気になりだしたものだからどうしてそんな事を気にするんだ?ときょとんとした表情の彼は立ち上がり、自らこの部屋と隣の部屋を隔てる襖を開け放った。
すう…、カタン。
龍太郎により両開き全開にした部屋は押入れに布団は引っ込められているのか、普通に畳張りの部屋。こちらからは達筆過ぎて何が書かれているか分からない掛け軸と動物の絵が掛けられた壁が見える。祖母は生前はここで書類だとか趣味の読書の本と向かってたのかな…。ほとんど関わらなかったから、あの人の日常を身内でありながら全然知らない。性格もだけど私の母にも嫌われてたしね。私も婆さんの事を好きではない方なんだけど……。
隣の部屋の何が気になったんだか…、と脚を楽な姿勢にと座り直して悟を見た。龍太郎ももぞもぞと座り直してる中、悟はじっと隣の部屋を眺めてる。
「寝室、ねえ……?」
隣の部屋から私に向きにや、と笑った悟。マリアの方を向いてから龍太郎へ顔を向けてる。この様子、悟ったらまーたなんかやらかしそうだな…。
隣の部屋に呪いが居るってわけじゃないのだけれど、悟が気になる通り、六眼持ちではない私でも嫌な予感というか空気は流れ込んでくるのは確か。歌姫も自身の体を抱いて擦ってる。そう、なんかゾクゾクする寒気がするんだ。
本能で"なにか"を感じる中で悟はこの状況で楽しそうに声を跳ねさせながら龍太郎に首を傾げた。
「寝室って、龍太郎の寝室って事でおけ?」
「え、ええ…」
「へー。じゃあ…、龍太郎とマリアはこの部屋で良く一緒に過ごす?そうでしょ?当たり?」