第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「来るのなら事前に言っていただければ…!」
「いーのいーの、抜き打ちチェックみたいで楽しいだろ?」
「抜き打ちって……何か試験受けていましたっけ…?」
悟のテンションについて行けていない龍太郎。
多分、歌姫も悟もその龍太郎の腹部に視線をやってる。やはり、松竹梅トリオも龍太郎も特に異変がなかった。じゃあ定期的に高専に通っているマリアだけが呪われたって事か。
……じゃあ、朝とか時間帯によるものなのかなあ。頭をがしがし掻きながら、むしろこう、人数が多い状態での行動に向こう(つっても呪い?)が警戒してるのかもしれないけれど。
「──なので、とりあえずは上がっていって下さい。大したもてなしは出来ませんが……」
近状の報告を軽くした龍太郎。どうぞ、と案内されるままに玄関から入って行く所だった。悟がしきりにきょろきょろと周囲を見回している…何かあるのかな……?
ここは春日の本家、庭に墓場だってある。ちゃんとした葬式らしい事もせずに埋めて、領域内に来ることを幸福であると捉える変人たち、春日一族の墓。
耳打ちってほどじゃないけど、小さく悟に聞いてみた。
『ねえ、なんかありそう?』
私の身長に合わせて少しばかり屈む悟はフッ、と笑っている。それは確信した様子と私は感じる。
「……うん、通勤も退勤も買い物もマリア自身への呪いに関係ないさ。原因は春日家にある」
その言葉は静かなこの敷地に居る全員の耳に入ってて、私は勿論、歌姫も松竹梅達も、マリアも龍太郎も。全員が凍りついたように通路で足を止めてしまっていた。