第33章 これは終わりではなく始まりの刻
携帯を取り出す歌姫は「高専の外に出るって連絡入れておくから」と操作しながら先にドアの外に出て行った。私もマリアの背を押しながら振り返る。一瞬カサカサ動いてた気配、完全に視界に入れた瞬間に硬直してるフリをしてる悟。
けれどぶっちゃけ構ってオーラが漏れ出してるんですよねえ……。
『悟、ほら行くよ、後で構ってあげるから今はオフからオンに切り替えて!』
ハリアップ!とドアを指して悟を呼び出すもまだ座ったまんま。
悟が来ないからといってマリアに先に行ってて……だとその見ていない隙に何かがあるかもしれないし。
「呪泉郷に行かないと無理、気分はオフのままの悟君ですね~」
『らんま1/2かよ。そんな変身体質ないでしょ!ほらほら、とっとと行くよ』
ドア付近にはマリア。もう一度医務室内に数歩戻り座ってる悟の手を引く。座ってた彼は仕方なく立ち上がって私の手の中をするりと指を絡めるようにされてぎゅっと握られてしまった。
あ、しまった!と思えばもう遅い。握った手はしっかりと指の関節を締めて離れん。
にこ、と笑顔を見せた悟はしっかりと手を握りしめている。
『……ぐっ、』
全然離す気の無い力。繋がれた手から見上げた、その彼の顔は非常に楽しそう。
「まあまあ、楽しみながら行きましょ行きましょ~」
『はあ…、この人はいつもお気楽だなあー……』
そのまま医務室から車庫へと向かい、連絡の為に離れていた歌姫も数分遅れてやってきて。
こうしてマリアに同行するメンバー全員が合流した後、マリア本人の運転での高専から出た後の"いつもの日常"の再現が始まった。