第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「オマエさあ、マリアの呪いによる負傷を吸ったならどういう"負"だったか分かるでしょ?その術式はどういう痛みかを知ることが出来るんだから、治療して分からないわけがない」
『まあ、うん……』
捻られるような痛みがあったんだと知っている。
内臓が捻られ、切られそうな痛み。常人ならば発狂しながらのたうち回る程に痛いだろうに……。人によっては気絶したり、ショック死だってありえたかもしれない、呪いによる負傷。
本気で断られるムードの中、ダメ元で断られてしまうことを理解しながらも、同行を許可しないと頑なな彼に頼むしか無いんだよね……。
口元が行かせないと言いたげな悟を見ながらに期待は出来そうもないんだけど。私は両手を口元で合わせ、悟の同行を頼み込む。
『だからここに居るマリアはもちろん、歌姫さんと私の他にも頼りになる悟も一緒に来て頂けないかと……思ってんだけど…、駄目でしょうか?』
他にも私がマリアに付き添う理由としたら、龍太郎に直接異変が無かったかとか、年季の入った春日家を少しでも手を入れて良くしていこうと、数人入れ替わりで派遣してる五条家の使用人にも聞いたりとか。
大して同行を許可してくれるっていう、確率を上げそうにない理由しか無いけれど…。
誘った後に頬杖をついてない頬を膨らませていた悟がその頬に溜め込んだ空気をプヒュ、と抜き、にっこりと笑った。
「……いいよ?」
『えっ…いいの!?』
許可するのあっさり過ぎない?と難航するかと思ってた協力要請に思わず歌姫と顔を見合わせた。互いに瞬きながらきっとお互いにマジか…、って思ってる。
……これは意外とサクサク行くのでは。歌姫は私から悟へと顔を向けた。
「マリアの事を考えると出来るだけ早い方が良いんだけど、いつならあんた空いてんのよ?」
「ん?さっき任務速攻終わらしてきたから今かな~……いつやるの?今でしょ!つーことで今すぐ。ナウだよナウ!」
『あー……こういう人でした、やる時は速攻行動、やらない時はだらだらと遅刻してくタイプ!』
デートとか朝起きた瞬間に行くよーって行くの決めてるし、結婚しよラッシュも凄かった。
今回も速攻行動な悟を私含む三人の驚きの視線に彼は口元を片手で隠し、もう片手で商店街のおばちゃんみたいに「やーね!」と振ってる…。