第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「やだあ~医務室で女子会やってんの?ハルカの他に歌姫にマリアまで居るじゃん、いやーん、サトコもサトコも~!マカロンとかフィナンシェとかつまみながらヌンティーしよー、歌姫はヌンティーのきゅうりのサンドイッチ担当ね!」
「チッ、静かに出来んのか、あんたはっ!」
悟が医務室に入ったのを確認してドアを閉めて。マリアの側でピタ、と立ち止まる悟。笑顔が一瞬に真顔になってじっと彼女を見下ろしてる。
「……チミィ~…なんかよろしくないもの拾い食いした?」
「してませんけど……」
「ふぅん?呪物でもつまんで食べたりしなすった?」
『虎杖かよ』
「そんな事は衛生観念からしてしませんよ…」
失礼極まりない彼の質問攻めを見て、これ以上はいけないとマリアを覗き込む悟の首根っこを掴む。中腰のままマリアから私を見上げた彼はにこ、と笑ってるけれどさっきまでのおふざけモードはかなり抑えられていた。
まあ、別に真面目ならいいか、と襟から手を離せば背を起こす悟。
「歌姫。マリアってこっちでさ、どっか任務だしてんの?」
「……出しちゃいないわよ、あくまでも医務室担当不足の為に通って貰ってるくらい。
さっきハルカに体の治療はしてもらったけど、そのマリアの解呪を完全にしてもまたいつの間にか同じ呪いを受けてんのよ。祓っても残穢が残ってて早めに対処したいんだけど…」
歌姫がそこまで言えば悟も理解したらしく、への字口でうんうん頷いてる。
そこで、だ。頼み事をするんだし、私は椅子に腰掛けずに側に立つ悟を見上げた。
『側にいれば治せるし、マリアの生活パターンの中にその元凶があるかなって思ってさ?マリアの行動に付き添ってみようって話をしてたんだけど、私もそれに付き合って良い?』
「……何いってんの、そんなの駄目に決まってんでしょ」
声色は呆れたようで肩を落とす悟は医務室内のベッドの方に向かい、そこにどっかり腰掛けた。膝の上に肘をつき頬杖を付きながらに不服そうな顔なんかして。