第33章 これは終わりではなく始まりの刻
『……また勝手に連絡無くどっかに蒸発しないでよ?私だって、悟が居ないと寂しいんだし…』
「………ンンッフ、」
突然、謎の鳴き声と共に隠されてない顔がクシャ、と皺を寄せる悟。特に顎、顎がやばたん。
その梅干しの種みたいな皺の寄せ方やめて?え、なに、何を考えたらそう自然に変顔出来るわけ?変なモン食ったみたいな顔心臓に悪いから止めて欲しいんですが。
その片腕が悟自身の胸元へ。皺が寄り、その皺の痕が残るくらいに掴んでる悟。
「ン゙ッ、またそういう離れがたい事言ってー!ずっと一緒に居たくなるじゃん!抱きしめていたいじゃん!永久に離れることない織姫と彦星で在りたいじゃん!
僕だってオマエと離れたくないのにそれを我慢して任務行ってるのにさあっ!」
『あー…ウン……いつもの発作かあー…』
「……発作なんて言わないで~??僕のハルカに対する正常な反応なんですけど?」
興奮が最高潮に達した後の冷水でも掛けられたみたいな、少し冷静になった悟。ちょっと残念モードの肩を落とし気味な悟に手を振って、任務に向かう彼の背中を見送った。
私は悟とのルーティンで充電をしたけれど、彼も同じくらい幸せな状態で向かっていれば良いなあ…なんて。部屋を出た最後の背中を思い出しくて……頼れるその背中がとっても愛おしかった。
『……よし、行動すっか!』
ぐっ、と拳を握りしめて荷物のある場所を振り返る。ある程度、京都の高専に滞在出来るように用意はしてあるから一部着替えだとか今回必要であるものだけは持ってきたけれど。
主に、歌姫へのお土産とかね。
お酒、重いからねー、ゴロゴロ運べるバッグがあるのが一番なんだよね。悟は「なんでお土産いちいち持ってくのさ」ってぶすくれてたけどさっ!
私はそれを持って、東京からのお土産を歌姫に渡しに足取り軽く部屋を飛び出した。
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歌姫を探しに細長い紙袋をぶら下げて、教員室に向かっても彼女はそこにはいなくて。
でも聞いた所今日は出勤してるって言ってたんだよなあ。歌姫の席にお酒、ドンと置いて後で連絡入れとくかな……?持ち歩きながら歌姫を探すのはちょっと面倒くさいし。