第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「こうして触れ合うのも良いけれどさ?あっちの寮でもオマエとイチャイチャしたいなあ……。
はーあ!マジで労働ってクソだわ!七海の言う事は正しいね、労働なんてホントクソだよ~……。新婚夫婦の幸せな時間を取るなんてねえ?そう思わない?」
『この界隈はブラックですので。文句は上層部に言ってね…?』
私に愚痴られても私にはどうしようもないんですわ。ならば、はっきりと上層部に意見を言える悟が直接休みを取りたいとか言えば良いんだけれど。
ぷく、と頬をふくらませる悟。言葉を言わずとも私の彼への助言は嫌だったみたい。
「ヤダよ、お硬い考えで時代に取り残されてるむさ苦しい主語のデカイしわくちゃな老人どもを見てイラつくよりも、頑張る僕をいっぱい甘やかせてくれる可愛い奥さんで癒やされてた方がいい!」
『こら、外でそういう悪口言わない。いつ、誰が聞いてるか分からないよ?』
そういう私に鼻で笑う悟。その後、「ねえ、ハルカ。甘やかせて?」と子犬のような潤んだ瞳を覗かせ、甘えるような声、そして片腕が私の首に掛けられて。ずし、とした悟の腕が彼の体側へと引き寄せ、彼を見上げたままに私達はゆっくりと唇を重ねた。