第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「ふふふ……五条家と春日家を繋ぐ子だ、生まれてきたらみんなに愛される子になって欲しいね~!んふっ、ちょっとお腹がぽこっと出てきてんの、赤ちゃんが育ってるからかな~?それともただ食いしん坊で最近ガッツき気味なハルカのお腹だからかな~?」
『おい、後半!』
チッ、と舌打ちをして撫でる手を軽く掴むと見上げた彼は楽しそうに笑い、再び人の腹を服の上からガン見してる。
「おー、コワッ!ねー?コワーイママだねー?腹は立てずに横にしな、だよ~?オマエは生まれてきた後、怒りんぼにならないようにね~?」
『誰のせいで怒られると思う?キジが鳴いて猟師に撃たれるような事口走らないなら流石に私も怒らないんだけどな~??』
時間ギリギリになって急いで車内に駆け込む人が数名、同じ車両に乗り込んで荷物を上に上げて……と、しているうちに新幹線は発車時間になったのか、駅を出発する。
窓から見える駅構内の光景がビルなどの高層の建物へと変わり流れていく。撫でていた手がピタ、と止まったので窓から悟の方へと振り向いた。
「とりあえず向こうの高専にハルカの事送ったら僕は関西方面の任務に向かうけど、速攻任務を終わらせてオマエの元に帰るから勝手に外出しちゃ駄目だかんね?高専の外に出るの、禁止。ぜ~ったい!」
いいね?と約束をされそうな中でひとつ彼に質問をする。
それってさ、ずーっと今日一日を高専敷地内で過ごせって事なのかな…?
『買い物とか誰かと一緒に行くのも駄目?』
「だーめ。行くなら任務終わらせた僕と一緒に行こうね?いくら仲良しだからって歌姫だとか生徒たちと出掛けないで。
……僕にハルカの時間を頂戴よ、忙しさを理由に一緒に居られる時間が少なかったんだから」
忙しさを理由にって言うけれど。悟も私も本当に忙しかったのには違いない。
言い訳じゃなくて本当に時間が取れなくて。ただの長距離移動である今がデートのように楽しんでる悟の気持ちが分からない事もないよ?
お弁当買って、こうのんびりと姉妹校に向かう移動だけのデート。この座席の並びからは他の乗客が見えなくてまるでふたりきりのようにさえ錯覚する。