第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「それがさ、見えそうで見えない攻防戦しかけてくんの。とにかく明るい安村ならぬとにかく元気なエケチャァンだねー……恥ずかしがり屋なのかな?」
ははっ、と笑う硝子は膝上のサトールを持ち上げて下を覗いてる。
サトールは短い手足をばたつかせ「ゴジョ、ジョ、ジョッー」と焦ってるし彼なりになにか恥ずかしいって感じるのかもしれない。充電の時も逃げるしね……あれ、ケツって理解してんのかな?捕まえ、脱がしてからの端子を差した後の虚無感ったら。
サトール観察が終わった硝子はデスクにサトールを置いて足を組んだ。勿論、サトールは警戒し距離を取るように机の端まで逃げていき座り込む。
「現在、食事も出来て調子も良いならまた二週間、京都に行っても大丈夫だな?
歌姫さんから今週末からまた二週間来てもらう為に、ハルカの健康状態チェックしといてって言われてたんだよ」
なんだってー!っとガッツポーズして喜びながら私の隣を見ると不愉快ですとでも言いたそうな口をひしゃげてる男が口元をヒクつかせてる。あ、拒否るな?ぐずるな、これ。
すぐさま正面の硝子に顔を向けた。言わずともくっつく為に私に回された腕の力は少し強まってる。
『行きます、行ってきます!いやー、やっぱりこっちはこっちで美味しいものもあるけれど。関西も関西で美味しいものが……、あっ…。
……向こうの、任務で負った負傷を、いち早く治さないと、ですもんね…?』
「「本音出てんぞ?」」
……そういう事で。
京都に出張する為直接体調確認をした硝子と私の出張の話を聞きイヤイヤとしがみつく悟。その日の午後になって正式に週末から二週間、京都行きが決まった。