第33章 これは終わりではなく始まりの刻
毒っていうか盛れるとして、部屋にある物といえば栄養補給のためのサプリメントと、少し前の二日酔いに利く薬と悟用のエビオスとか亜鉛とかで。
彼自身しばらくそういうサプリは飲まなくて良いと思うんだけどなあ…。別に飲んでて無意味ってわけじゃない、けどほぼ毎日飲んで今気合い入れてもさあ……。
写真を見終わった硝子から受け取ったものを手帳に挟む。無くさないように大事にしまい込んで、と。
『いやいや、盛りませんって!盛るは盛ってもご飯茶碗に白米、くらいですよ~?』
「白米ねえ…、」
私達が話をしているとガタッ、と医務室のドアが開け放たれ、そのまま入ってくるのは噂の人。アイマスクをした悟が私の視界に入り、そしてその視界の中の硝子がチッ、と迷惑そうに舌打ちしてた。
「なーにーィ!?やっちまったなァ!奥さんったら僕に"盛った"のねっ!?」
「……うるっさ」
硝子があからさまに悟を視界に入れないように顔を背ける中、医務室に入ってきた彼はツカツカと中にやってくるなり、予備の椅子を持ち私の隣に座る。そして私の肩にタンッ!と手を乗せて。
はい、今日も謎の絡みが来ましたね、と私はそんな悟がら体を少しばかり離しつつ。
(けれども悟からべたーっとくっついてくる)
「聞いてよ、硝子ー!さっきこの子ったら自白したろ?オマエも聞いたよね?僕ね、毎日盛られてたの、毒を!ポイズン!」
いや、盛ってないし!盛ってたら何かしら体調不良なり起こしてるでしょうに。
ぶんぶんと頭を振って悟の虚言のサスペンスのワンシーンみたいな物騒な発言を拒絶した。
『毒なんて盛ってないでしょっ!ンな物騒な言って、杉下右京だとか榊マリコのようなルーラー召喚の媒介にしようとしないでくんない?』
「へー、毒か。毒はなに?シアン化ナトリウム?ヒ素?それとも…、」
「ちょっと硝子ー!一発でキメに掛かってるやんけ!僕、死んじゃう毒は盛られてないよ!?」
両手の人差し指をクロスさせて「そんな毒々しいのは頂いていませんからねっ!」という悟。えー、じゃあ何を急に盛ったっつってんだ?盛った記憶無いけどさ?
手でばってんをしてた悟は私の首に片腕を回し、笑窪を見せたドヤ顔をコチラに向けてる。