第33章 これは終わりではなく始まりの刻
317.
医務室にて。今日は硝子のシフトの為にこっちで作業をしながら待機をしてるんだー…。
事務所内の静かでありながらも修羅場の空気で満ちた室内よりも、こっちなら同じ静けさの中でも周囲の殺気立ったタイプ音や紙のめくれる些細な音に威圧されず、自分のペースでのんびりと急かされずに進められる!……とさくさく進められていたんだけど。
完全オフの硝子が緩めな私服を着て医務室に来たので、進めていた持ち込みの仕事を中断して、彼女にはコーヒーを……私は白湯を。机の上にサトールが座り私達をゆっくりとした動きで交互に見てる。
硝子はコーヒーを手に取り、机のサトールをじっと見てから私に視線を映してフッ、と笑った。
「……で、定期検診どうだったよ?」
今は16週目、先週行くのが難しかったから月イチの検診に最近行ったのだけれど。
悟に持っていかれそうなのをなんとか阻止した写真を取り出し硝子に渡す。どれどれ、と受け取り覗き込む硝子。じっと見て彼女は笑った。
「お、臍帯(さいたい)はっきり映ってんね、これならひと安心だ。どうなの?最近の体調は。食べられてるわけ?」
写真を返しながら硝子はじっとこちらを微笑みながら見てる。
そりゃあ、もちろん!と大きく頷き。
『いつからってワケじゃないですけど。トイレ駆け込みやゴミ箱を半径1メートル内に常備しなくても普通に食べられる状態に戻りましたよー!いやあ、ご飯が美味しいことは幸せですわ』
「食欲有るのは良いけど食べすぎんなよ?特にあの五条だからな、ハルカが食えるようになったと見ればあれも食えこれも食えとハルカに餌付けしてくるんじゃないのか?食欲があるのは良い事だけど逆に食べ過ぎるのは良くないよ……当たり前だけど」
……お察しの通りです。
硝子を目の前にしながらにほんわほんわと思い浮かべるは最近の出来事。