第33章 これは終わりではなく始まりの刻
うんうん頷く悟は、面倒くさそうな表情へと変わり、はあ、とため息をつきながら私のデスクの空きスペースに報告書を置いて付け足してる。
サラサラと何かを書いてるから思い出したんだろうけど。悟は報告書から顔を反らさずペンを走らせながら。
「……あ、もしかしてフライドチキン以外は食べたくないから買ってきたものどれも要らない感じ?」
『食べる!』
「なにその、うちのワンちゃんは喋るんですの~なマダムの犬の吠え方みたいな言い方~」
『……あ゙?』
それはただ濁点付けたようなアウアウ吠えてる犬だろ?人の言葉に聞こえるって錯覚だろ?
ふざけながらも報告書はよく書けるもんだなあ、と上から追加してるものを視線で追っていく。こういう二度手間が面倒くさいんだから書けるなら始めからそうしとけ~?と内心突っ込みながらも追っていけば空白にペンを必死に走らせて落書きをする悟。
『あっ!こら、学生のテスト終わりじゃないんだからスペースに落書きすな!』
「あ、ちょっと!もうちょっとで書けるのっ!」
『続きを書くなっ!アームストロング砲を書くな!』
手首を掴み、離そうにもムキになって続きを書く男……今年の末に三十歳になる人。
ニヤニヤしながらタマとか描いてる。報告書は自由帳じゃねえんだかんな?書くのならチラシ裏とか自由帳買ってやってくれや。
『チラシの裏にでも書け、報告書はそういう絵を描くフリースペースじゃないのっ!』
「やだー!……はい、完成!」
『最後まで描ききりおった、この人!クソ…ッ、しかもボールペンじゃん!』
「完成度、高えなオイ」
『いや低いわっ!
ここはフリーハンドでも芸術ポイントを稼ぐために艶の有りそうな丸をね、こう書いて……って書かせんな恥ずかしい!』
悟が来て、確かに細かく報告書を書いてくれたけれど。それはプラス点だけどちんこを描くのはマイナス点。しっかりとボールペンで書かれたものを見て、またその横に片玉を書いた所ではっと我に返った私。危ない所だった……完璧なモノを描い、じゃなくて注意出来る立場じゃないでしょ…。
監督不行き届きな現状に落胆してれば、机から体を起こし背をピンとした悟が伊地知の方を向いている。
「伊地知ー、笑った?」
「……笑ってません」
「嘘おっしゃい!笑ったよね~、後でぷちビンタだから」