第33章 これは終わりではなく始まりの刻
両腕をワキワキと奇妙な動きをしながら(ガサガサと音を立てる袋から良い揚げ物の匂い出しつつ)にっこにこの悟が私のデスクに近付いてくる。
私語とかの前にまずはやることが先。捌けておいた書類……と。
それを拾い上げて近付く悟にずい、と差し出した。丁度キョンシーのように額にペチ、と当たった人差し指の爪。紙も彼の顔を隠すし動きも止まったからマジキョンシー。キョンシー・悟。
『ほら、私よりも三月の報告書の方がスッカスカで寂しいってよー』
「……っはぁ~~??」
空いた手でゆっくりと額に押し付けた報告書を私の手から受け取る悟。大して見応えの無い内容なのにそれをじっくり読んでる彼。報告書に隠れた表情は横から覗き込めば、下唇がちょっと前へ突き出てて不満そう。
じっと一度は提出していた報告書をもう一度見ながら(そもそも見直したのか謎)、ビニール袋を下げた手で顎に添えるように指を当ててる。ぶらん、とぶら下がるそいつはよく見ればふたつ。報告書に夢中な悟のその袋に手を伸ばすと手放して渡してくれた。
思い出している間にどこのコンビニに寄ったのか見よっと。
『ありがとー、どれどれとりあえず今は見るだけ~……』
ふふん、片方はこんもりとしてスイーツ系らしいプラ容器の硬さを感じたから悟のだとして。もう片方、ローソンの袋だしLチキかな?と覗き込むとそこには……。
『うわ、なにこれチキンの宴??各店舗のホットスナックの袋ってかなんでからあげクンあんの?』
袋を開けて覗き込めばむわぁ…と立ち込める美味しそうな香りが広がる。それだけでなく、リクエストしたチキンのどこかってつもりが全店舗を寄ってきたらしい、あらゆるホットスナック用の紙袋。
事務所で匂い撒き散らしたら迷惑かな。すぐさま袋をすぼめてがさ、と取っ手部分を持った。
「んー…、全件ハシゴしてフライドチキン×3よりももっとひねった方が良いんじゃね?って僕なりに思ってさー?
セブンで揚げ鶏、ローソンでからあげクン、ファミマでつくね串買ってきたんだよねー」
『リクエストひとっつも掠ってねえ!けど、美味しいのは確かだねー』