第33章 これは終わりではなく始まりの刻
……ビールは飲めずともなんか食べたいんだよねー、と乙骨の報告書を前に片手でポチポチとパソコンで打ち込み始める。ただ喋ってるだけじゃ目の前の仕事は終わりません。
『んー…じゃあ……ななチキかLチキかファミチキ』
"えっなにフライドチキンが食べたいの?"
『うん、そういう気分です』
分かったー、とのんびりとした声が聞こえて通話が切れて。携帯を置き、悟以外のまともな報告書のデータ入力を集中して進めていく。
こうして集中的に入力していると皆頻繁に呪いを祓う為に外に出ているんだなー……と今じゃ主にサポート(非戦闘員)側となってしまった立場上、羨ましくも感じた。あちこち行けて経験積めるんだよね。あと、外食したり、気分転換になったりさ。
今はこうしてキーボードをカタカタ打ち込んで、呼び出されたら医務室で治療をし、変わった怪我だとかを私が覚えるように式髪に吸い込んでいって白髪化を進めるサイクル。
同じような症状だと今は硝子がサクサクと治してしまってるから事務作業の方が多くなると見込まれる、私の呪術師としての仕事。
医務室に行くのが確実なのは硝子の休憩時とか、休みを回す時に入る時。また京都に呼ばれればあっちは医務室にずっと居る事になりそうだけど。
私用のマグカップに手を伸ばした。
つっても中身はコーヒーじゃないんだよねえ。
以前、学生になる前に人手も足りないし小遣い稼ぎに雑用を、そして学生も後半頃の事務に入る時のブレイクタイム用に飲んでいたコーヒーは、流石にNGが入ってる。
……なのでそれ以外を。現在マグには半分ほどの梅昆布茶が入っている。久しぶりに飲んだなあ、意外と美味しい。
時間が経ち少々温くなったお茶に口を付ける程度に飲めば、ドタドタとやかましい足音がこの静かな事務所という修羅場に聞こえてくる。どんどん近付く音……なんだこの騒々しいの。鼓膜にダメージを掛ける音っていったら悟かな。
ドアを勢いよくバァン!と開け、ややスライディング気味にやってきたのはアイマスクをした悟。ガサッ、と片手にコンビニの袋を下げていた。
「呼ばれて飛び出てサトルちゃん!寂しんぼのハルカちゃんの為に猛ダッシュで来たよー!
ねっ?寂しかったでしょ?でも安心して?僕が側に居るよ?キミの側にいつでもアルソック、吉田沙保里じゃないけど六眼ビームで危険から見守ります!」
『出オチからうるっせ!』