第33章 これは終わりではなく始まりの刻
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さて、一年の中の別れや終わりの三月という月も終われば次にやってくるのが出会いと始まりの四月。
まだ寮に住んだままで、私は学生服からスーツへと袖を通すことになった。
本職は医務室で、硝子が居て私に覚えさせる・最適な治療方法という場合での治療要請以外はただ部屋や医務室で待機というよりも事務所に居る。尋問時に拷問が必要であればそっちに呼ばれる、と。
硝子のようでも、伊地知のようでもない両方の間のようなもの。雑用…とも違う、曖昧な皆のサポート。生まれた家によって獲得した術式で医学の知識も呪術の知識もなく、それのおかげで宛てがわれた業務なんだけれど。基本は治療も解剖も出来る硝子が東京に居るのだから本来ならば私は京都行きだったろうに一部の声によってこういう立場になったんだとか。
……一部の声って。悟しか居ないだろうに学長もそこはごまかせると思ったのかねえ。
スーツを着た私は早速だけど事務所に来た。挨拶をして仕事の分配をされて、専用デスクを案内されてってね。そこは普通の事務職みたいなモンか。
ただ初日にしては側には捌ききれないくらいの紙束が異常。これ、ひとりでやれって?私がかつて新卒で入社した、そして後に高専での呪物の設置に行った芥通信本社よりも無茶振りの仕事量のような気がする…!しかし文句ばっかりでどれだけ嘆いても事務室に居る人数は少なく、日々の呪いの発生に対しての調査や報告書、始末書、被害報告などを見るにこれが妥当な量なのかも……。
やるしかないのか…、と項垂れながらも今になって伊地知ってすげえんだなあ…と、少し離れたてきぱきと仕事をこなしてる、額に冷えピタをしている伊地知に尊敬の視線を送る。
……事務他、呪術師を送迎し、調査結果とかも分かりやすく纏めて説明してんだもんな。影の最強とは彼の事では。
とはいえ私はそこまで頑張らずとも治療も事務もほどほどに、今度こそ身体を壊して迷惑を掛けないように頑張らないと、と画面と傍らの書類とのにらめっこを始めて。いつ呼び出しがあっても良いように、デスクに白衣を畳んで置きながら初っ端から報告書をパソコンに打ち込んでいた。
『……ヒン…』
しかし終わりが見えなくない…?ちゃんと減っていってるの?大食いメニューのラーメンばりに食べてるのに増えてるような錯覚をせざる負えませんが……。