第33章 これは終わりではなく始まりの刻
ギシッ、とベッドが軋み、仰向けの私のすぐ横のベッドマットが片方へこんだ。悟が手とか肘とかついてるからそこに体重が掛かったんだろうけれど…。
「──ねえ、僕の事、好き?」
すぐ目の前からの声。目と鼻の先くらいに悟の顔がある。その位置から声が聴こえてきて、私は小さく頷いた。
すき、すきだから。焦らさないで来て欲しいのに…。
『すき……、ぁっ!』
脇腹に触れられた手。びく、とした後にするするともう一度胸をいじめ始める悟の指。
「ほんと?」
『ん、ぅ…!ほんと、ほんとだからっ』
「じゃあ、目隠ししてても大好きな五条悟先生の唇にチュウ出来るよね?手探りで僕を探して、ハルカからキスしてごらん?
そしたらお望み通りに欲しい所にあげるから…」
アイマスクにより真っ暗な視界の中。両手で目の前に居るであろう人物をぺたぺたと触れる。
ここ、は…鎖骨か。
「ふふ……くすぐったいんだけど?」
『ふふ、下過ぎた。ごめん、じゃあ……』
そのまま触れて首があって。喉仏、となぞっていって、整った肌……顎に触れて。
じゃあ、ここか、と柔らかい唇に触れたら、れろ…と舐められて引っ込めた手。
『ひゃあっ』
「あはっ…!びっくりした?」
『そりゃびっくりするわっ!』
ふふふ、と私からは見えないけれど短くも笑いあった後。そうだ、と彼のサラサラとした髪をかきあげ、短い後頭部の髪に触れたならそのまま引き寄せて。
呼吸を頼りに、近付けた彼の頭。降ってくるように暖かくて柔らかい唇が重なる。
正解はしたのだけれど、唇を食むように悪戯をする彼にやり返そうと私も彼の唇を食めば、そのうち舌も絡み合って、唾液も吐息も混ざり合う。
もう、教師だとか生徒だとかそんな関係を保てる状況じゃなかった。唇だけじゃない、もっと求めてる身体。欲しい物は既に子宮にある。今は見えないもの…互いに感じあえる愛情と気持ち良い事がしたい。満たされたい…!
くす、と笑った後に遅れて悟は「正解」って囁いた。
「じゃ、ゴムするからね。キミはすこーしだけ、待っててね?」
『待てない……て、言ったら?』
「だーめ、待ってて。おあずけもえっちの一部だからね?がっつかずにゆっくり楽しみましょう」
『(それ、普段の悟に言ってやりたいなあ……とか言ったらブーブー言うだろうな…)』