第33章 これは終わりではなく始まりの刻
そっか、疲れてるのか。じゃあ、無理に今夜抱いて?なんて誘えないかあ…。
少し残念に思いつつ、今日はゆっくり休んでもらって明日にでも誘おうって気持ちを切り替えて。作り置きのおかずを冷蔵庫から取り出しながら彼が早く休めるようにご飯を食べられるようにしなきゃ、と夕食の準備を進めてく。
「……そういえばさー、荷造りどこまで進めた~?」
テーブルにさっき盛った金平を運んでる悟。同じく冷蔵庫から取り出したものを私もテーブルに置いたから丁度向かい合うように視線が合ってしまった。
お互いに置いた動作のままに固まって私だけ瞳をしきりに瞬く。
『終わってないけどね?そこそこ纏めたのはいいんだけどさー、』
「うんうん」
『……あの大量のニポポ人形なんとかしろ~?多すぎなんだけど。何?北海道行く度に買わないといけないって縛りでも課してんの?厄介な呪いじゃね?』
指先で彼の部屋方面を指す。あっちにニポポ人形あんだよ。ダンボールには入れてない、見える所にボウリングのピンみたいに並べてありますけどね?
あっ、と思い出した表情はぶすくれた口元になって「へいへい」とテンションを下げた言葉を吐き出して了解した。全部処分しろなんて鬼みたいな事は言わないけどさ、ちゃんと数減らしたりして今後増やさないでくれないかなあ……。
悟は片手を挙げ、真剣な横顔をして背を向けた。
「ちょっとニポットモンスターの6V厳選してくる」
『ポケモンかよ、木製だしあれ草タイプしかいないだろ……。まあ、見て来たら?その間にご飯とか盛っておくから』
「スパシーパ!」
ロシア語でのありがと、と言った悟。優しく笑った後に隣の部屋へのショートカットをしている。その姿を見送って煮物の鍋を退かし、味噌汁の鍋をそこに置いて温め直す。しゃもじを持って炊飯器前に移動した時に何か急いでるのか、ツカツカと彼が早足で戻ってきた。ニポモンの厳選終わったのかな?
『終わった?いじっぱりニポモンとか選んだ感じー?てかニポモン、特殊?物理?どっち属性なの?』
食いつくだろうと悟に合わせて言いながら、炊きたてご飯をしゃもじで混ぜて、ご飯茶碗に盛って……。
「……」
……あれ、無反応だな。食いつかない。