第33章 これは終わりではなく始まりの刻
その方向を見た悟は両手をこちらに向けてる。にこー、とドヤ顔で。
「帰ってすぐにハグ&キッスしたかったから寮入って共同スペースで済ませてきちゃった☆玄関開けたら即ハルカとイチャつきたいもん!」
『すっげー計画性…そこまで待てないのか』
うんっ!と元気良く頷いて室内に先に行く彼。ホントにこの人、何件か掛け持ちした任務帰りなの?という元気の余りっぷり。
私もご飯作りの続きをせねば、と彼を追うと悟は上着や中のシャツを腕まくりしてキッチンに立ってる。
煮物の蓋を開けて確認したり、おかずが盛られてる皿を見て。
「えー?もうここまで進めちゃったの~?僕、一緒に作りたくってちょっと早めに帰ってきたつもりなのにー!」
『早いぶんには良いじゃん。それに悟、作りながらにセクハラしてくるし』
いつも過剰なボディタッチが付きもの、と言いますか。彼だから嫌じゃないけど……しつこいのはもちろん嫌だけどね?
「え?だって尻は揉んでなんぼでしょ?パイオツもソフトにモミモミしたくなるじゃん?」
『……他所ではやんなよ??日常を疑われるから』
今だアイマスクのままの悟が口元を歪め、それだけで"当たり前だろ"って顔してる。
割とすぐにアイマスク取るんだけれど今日はなかなか取らないな……任務中に眼を酷使したのかな?それで疲れているとか。
「まだ煮込んでた感じだねー」とコンロに再び火を入れてる悟の横顔をじっくりと見る。視線に気が付いたのか、彼はすぐに私を振り向いた。
「……ん?どったの、そんなにまじまじと見つめちゃって。僕に惚れ直しちゃった?いいよー、もっともっと僕に沼って。五条ハルカの最推し、五条悟。いいね~僕そしたらファンサとしてもっともっと、」
『今日、領域展開でもしたの?』
いつも以上に饒舌な彼は無駄口を止めて「ああ、それかあ…」とアイマスクを片手で触れた。片目分だけ持ち上げて、細められた瞳はいつもと変わらない綺麗な瞳。その青を細めて笑う。
「まあね~。今日一級呪霊とやりあった時に領域に連れ込まれてね。僕の方が呪力量が大きいから、相手の領域を押し返してやったんだ。呪力も目も酷使したから久しぶりに疲れたかなー……」
『そうなんだ……お疲れさま』
「ノンノン、そこは五条家らしくお疲れサマンサ!だよ?」
『五条家関係なく悟だけだろ……』