第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「はぁ~い!僕の愛するの奥さんは~……愛してやまない旦那さんだけにチュゥをする、タイムだよ!」
『……プリティーなダービーを彷彿としましたけれどインスパイアされました?』
なんか、ちょっと手を広げながらに振り付けみたいなのしましたけれど?
クス、と笑った悟は手を上げる角度を下げる。YからTになった。この流れだと両腕をすとん、と体につけてIになんのかな、とか思ったけれどそれ抱きしめスルーやん!とかツッコまれそうだから触れないでおこう。
「ん~ん、そんなワケないジャン!そんな伝説起こりそうな事~…
ねっ、それよりも旦那さんのココ、寂しんぼなんだけど…?」
片手で指差すのは唇。すぼめてちゅっ!と小さなリップ音を立ててからにこ、と笑いまた広げたまま待機する腕。
今日も帰って早々に部屋を賑やかにしてるわ、と悟の胸元に手を触れ、片手をそっと首へ。後頭部でサリッ、と短い髪を逆撫でて身長が離れた分手繰り寄せるよう、彼を屈ませようとしつつ、私自身もつま先立ちをする。
唇の位置をちゃんと確認して、目を瞑り互いの柔らかいものが触れ合ったら私を逃さないと言わんばかりに背後で待機してた悟の両腕がぎゅっと包み込んだ。
『ん、んん、ぅ…~~!』
角度を変えてつま先立ちなんてしなくて良いくらいに彼から追われる深いキス。かぷ、と何度も捕食されている。
口内をまさぐる舌は空気も唾液も持っていきそうなくらいに暴れまわっていた。私の舌さえも手繰り寄せて、ざらつく舌が反応を楽しんで。
逃げようとする私の背から後頭部に片手が触れてとことん長いキスを楽しんでる悟。
つぅ、と口の端から唾液が零れそうな頃に唇が離れ閉じてた瞼を開けたなら、目の前にはアイマスクの目元。きっとこの布一枚隔てた先では楽しげな瞳をしてんだろうな、簡単に予測がついた。
袖で溢れた唾液を拭い去る彼。
「っはぁ、帰宅早々にチャージ完了~!」
『……私は悟に吸われて色々と減ったんですけど……。あれ、今日は洗面所行かないの?』
とすとすとす…と静かに洗面所前を通り過ぎた悟。いつもなら手洗いうがいをするんだけれど。