第33章 これは終わりではなく始まりの刻
サトールが引っ張ってきたのは雑誌なのは違いないのだけれど、視界に全容を捉えた瞬間に私は凍りついてしまった。思わず『げっ!』って声を漏らしつつ。
それでも気にせず「ヌー」と引っ張ってきた彼は私の側に持ってきて、なんだか誇らしげな顔を見せてからカサカサとまた悟の部屋に走っていく。ミッション・コンプリート。残されたのは雑誌と私。そして床に置かれたその雑誌は……。
『……まごうことなきエロ本やん…』
あれだけ求めてきながらもまだ足らないのか、それともまた別の趣向があるのか。この本がいつからあったのか分からないから、発売日当日に買ったとかじゃないだろうけれど手に取り、日付を確認すれば出張とかよりももっと前。秋頃に発行されたものみたい。
エロ本隠してた(サトールが引っ張り出したからどこにあったのやら)の忘れて片付けを任せるとは…、と呆れつつもぺら、と思わず表紙を捲る。
『………すっご』
シチュエーションだとかコスプレだとかあらゆる場面での行為によがる女性の写真と、モザイクと。
白濁した汁が肌を伝ってる所とか載ってる。快楽に堕ちた表情、艶めかしいポーズ、見えそうで見えない交わり。
固唾を飲み、また一ページを捲っていき片付けそっちのけで悟が帰ってこないからって興味のままにそれを捲っていく。
……なんだかんだで最後まで捲りきってしまった。
正直言って、引いたとかそんなんじゃない。むしろ…ウン……こみ上がるものがある、と言えば良いのかな。
それは吐き気じゃなくて、見た事でこういう事もしたいな……という願望。でもさ、あまりハードな事は出来ないってモンで。
むずむずそわそわとした気持ちで、そのエロ本を悟の部屋に行き、多分ベッドの下なんじゃないのかな~?という願望をもってベッド下を覗き込んだ。
『んしょ…、うわ、まだ在庫あったし!』
ある意味分かりやすい位置に隠してたといいますか。私が今手に持ってるのとは別にあと二冊あった。そりゃあこうもサトールが通れる隙間に置いてありゃ簡単に引っ張り出せてしまうってモンでしょ……。とりあえずは持ち出された本をその二冊の上に重ねておく。どういう形でおいてあったのか私は知らないし。