第33章 これは終わりではなく始まりの刻
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普通の社会人だった私に訪れた転機、短かった呪術を学ぶ高専生活が名残惜しくも終わってしまった。
基本マンションで過ごし、呪術高専に週に数日連勤で入る事。その連勤をマンションからではなくより近い寮から、という事で物置・クローゼットと化した悟の部屋を縮め、どうせ一部屋を共有してるならこれまで通り一つの部屋を使う事にしよう!
そういう結論が出て私の部屋だけ残す事になり。
今度は呪術師としての社会人となるまでの数日間。普段過ごしてた寮の部屋からマンションに運び出すものや悟の部屋の私物(主に服とか各地で衝動買いしたもの)を一人で纏めてる。
今は任務に行っているであろう悟にゆっくり休んでね、なんて言われても休めないんだなー、これが!
彼の部屋で一人、クローゼット前で気合いを入れて開いた。ギィ…、と開けた両開きの扉の中。目の前には服が並んでいるけれど、視界の違和感の為に視線を下へ。
『……なにこれ、アイツニポポ人形何体も買ってんじゃねえよ!馬鹿!絶対こんなに要らなんわっ!』
クローゼットの中、下に並ぶニポポ人形。北海道に行って買ってきたな?しかも行く度買って来たんか?八個も出てきたんだけど?過剰に買いすぎだわ、仕入れ業者か!?
とりあえず、持ち主は任務中。のんびりしながら荷造りしてなよ、と言葉通りにしてるけどさ?捨てたりするのは悟の許可も必要だから、要確認するものを床に並べてる。服は分かるよ?けど各地のお土産はわけわからんものばっかり。
疲れというか面倒くさくなって、今日も壁の穴(悟によるリフォームされた穴)を通って自室へと戻り、振り返ってその仕切り板が開けっ放しのデカイ穴をまじまじと見る。この穴もどうにかしないとだよねー……。無駄な工事すんなって思うけれど、何度もこの穴にはお世話になったのも事実。
自室のキッチンに向かいながらお昼についてを考える。
お昼何食べようかなあ。お茶漬けと後は野菜類と、チキンが冷蔵庫にあったっけ。蒸したやつ。後は果物も食べとこうか……。
悟も居ないし楽にしながらに、簡単すぎて栄養が偏らないように気を付けてキッチンに立つ。今は調子は良いけれどいつマーライオンタイムになるか分からない。手の込んだ料理をしてそれを戻してしまった時の残念な気持ちったら。仕込み時間とか調理時間…、手間を掛けた時間を返せ!って悲しくなるんだわ、これが。