第32章 御三家
『……禪院直哉って人、知ってます?』
「ああ、あのいけ好かない糞野郎だろ?……なんだ、オマエ、あいつになんかされたか?」
皺の寄る眉間。彼女もあの直哉に嫌な思いをしたんだろうな、と察しつつ。
『なんか…っていうか。
歩いていた所、急に個室に連れ込まれて、妾になれとかケツ揉まれたり、罵声を浴びせられたんですけど……』
「……まあ、ヤツならやるだろうなー……」
『つわり効果で逆に禪院直哉にマーライオンしてやりました』
やったぜ。と真希にサムズアップをかます。すると二名ほどマーライオン…と呟かれた言葉が重なって聴こえた。
真希は真顔になり、目を見開く。そして……。
「ぶっ、……くっ、ははっ!ふははははは!!」
きっと想像したんだろうなあ……、真希の中で直哉に向かって私が噴射してるシーンを。
腹を抱えて爆笑し始めた真希。私の視界に入る乙骨や狗巻、パンダは微妙な顔付きをしてる。それはしょうがない、今から元を取るくらいに食いまくるぞー!って時にリバースの話だもん。立場が違えば私も同じ顔してたわ。
そこへあの時会議に参加し、二発目もやったれと指令を平気でしていた、心なき五条家現当主の悟が参加してくる。
「よせば良いのに、会議中お腹鳴ったら恥ずかしいからーってねえ、よりによって朝からコンビーフとかハムチーズとかたまごとか詰め込んだホットサンドをみっちり食べてたの!それをハルカったら直哉の服に大量に吐いてんだわ!しかも直哉、家中に響き渡るような情けない声で叫んでさー!ぎゃああって!
駆けつけた僕らの前でまたハルカ、気持ち悪くなっちゃって?シンガポールかと間違うくらいにすっげえ勢いて第二波を直哉の胸元、服の中目掛けて吐いちゃってんだよねー!
まー、お陰様で皆に反対なんてさせる間もなく、婚姻については認めてもらえたよ~っ!」
『ちったあボカせ、飯前やぞ??』
「あ、ぼかした方が良かった?じゃあささくれた塩味の牛ほぐし肉のホットサンドと豚ロースの円形かつ薄切りで~…、」
『ホットサンドの中身ボカしてどうすんの、意味ねえだろ…?一度取り入れた後に放出してっからボカした所で全部の食材がミックスしとるわっ!』