第32章 御三家
あ、まーた人様に迷惑掛けて……、と伏黒から悟を剥がそうと片手を出した所で既にキツくしがみついてんだ。止める隙なんてなくて、伏黒側へと伸ばし掛けた片手をゆっくりと私は降ろす。
要は諦めた。こんな悟には我儘に付き合うか、もしくはご褒美が無いと折れないのを充分に理解してますんで。
小さく伏黒が「重っ」って漏らしてた。その重さ、特級の呪いの重さだよ?
悟は擦り付けた頬を離し、それぞれの生徒に顔を向け叫んだ。
「キミ達だけでエンジョイ!?確かに若人の青春っつったけど僕も誘ってくれたって良いジャン!なーんで大人組も生徒達も僕の事誘ってくれないの!?僕が何をしたっていうのさっ!そんな遠回しのツンデレじゃ僕も理解に苦しむよーっ!」
「……」
伏黒の顔は真顔だけれど、何か術式で影を周囲に漂わせてます?というオーラを感じる。誰が見ても苛ついてる、という彼に虎杖は手を口に当てあわあわとゆっくり首を左右に動かしながら悟の服をそっと掴んで剥がそうとしてるけど悟はそれくらいじゃ離れない人。多分、宿儺が出てきてべりっ、と持ち上げないと無理ですねっ!
アダルトチルドレンな教師を見下し、呆れた様子の釘崎。
「たまにはハルカを独り占めしないで生徒同士のうちに食事会とかさせなさいよー、心が狭いわねー…」
「なにさ、野薔薇だって学校の時ハルカと良く一緒に居るじゃん!僕だってもっと独り占めしたいもんっ!なんでい、独占禁止法いつ出来たのっ!クラスメイトかもしれないけど、僕の奥さんでもあるのっ!それと心は太平洋の如く広いもんっ!地球の海の比率よりも僕の心はもっともっと広いかんね!?」
『何いってんのこの人……火を見るよりも明らかに水たまり以下の狭さじゃん……はあ、』