第32章 御三家
部屋の真ん中で服を摘んでなんか騒いでる中、私は背後を振り向き悟を見上げて。
『さとる、また…出そう、なんだけど…、ウッ、』
この悲惨な状況の中でにっこりと笑った彼はためらう事無くまっすぐに私の背後を指す。その指先は汚れた服を自身から遠ざけようと汚れていない生地を指先で摘みながら慌てている直哉。「えっ?」と悟に指差されているのを見て固まっていた。
「どうせ汚れてんだし、直哉に吐いときなよ。密室に連れ込んで僕のお嫁さんになにかいかがわしい事しようとしてたんだろ?」
「ちがっ、俺は悟君にはもっと相応しい子が居るってぇ、あっ……」
口を抑えてた手を離し手を勢いよく、直哉の和装へ伸ばして掴む。
『も、むり、』
「よーし、ハルカ!だくりゅうだ!」
ポケモン扱いすな、とでもツッコミたいけど声なんて出るよりも先に技が飛び出そうで一度えずく。
少し声の弾んだ悟の掛け声に合わせるように、狙ったわけじゃないけれど前方へと飛び出せばそこには一度受け止めている直哉の胸元。ちょっと二回目は可哀想かな、と思うも込み上げたものを飲み込むとか無理で、発射直前の状況は止められないのだから仕方ない。
巨神兵だって破壊光線止められなかったじゃん、あれと一緒よ。
ドチャ、というかビチャビチャ、というかそんな言葉に現すに困る音を立てて一度目並みの量が口から飛び出した。
「あ、ああ…っぎゃああああ!また吐きおったこのアマァァーッ!!」
気持ち悪さのままに噴射した朝食だったもの。誰にも止められることなく、むしろ「服で受け止めんか!」と当主に言われて受け止めねばいけない状況になった男。
本日二度目の悲鳴が禪院家に響き渡った。