第32章 御三家
かなり苛ついてきたんだけど?
胃も吐き気に釣られて消化よりも戻す意志を持っているような。これはヤバイかも、の状態で私の一言の反論に直哉は調子に乗っていく。胸元を指差しながらククッ、と笑っていた。
「許嫁のあの子と比べたらハルカちゃんの方が出るトコは出てるみたいだけどな?同衾だけ良くてもそれ以外じゃ悟君も満足せんやろっ!
あ、悟君と別れた後に行き場所に困ってるんなら俺の妾って事にしとく~?初代の春日みたいになあ!」
すっ、と直哉の片手が私の腰に触れてもみ、と尻を揉まれた瞬間だった。
怒りを込めたストレートでも出れば良かったんだけれど、その拳はぐっ、と抑えて引っ込めた。
手を出しちゃ、駄目だ…!自身の震える拳を片手で掴みながら引っ込めていると、私の身体に触れた手を引っ込められて。
「はははっ!お怒りモードですかあ?
……男に手ぇ出す女とか論外やん、そんなんじゃ悟君の妻とかやってけんわ!さっさと五条家から身を引いて、そのままウチにも近付くなや」
『……ぐ、』
「ぷっ、なあんも言えへんの?悔しい?なあ、悔しーい?」
少しうなだれながらも口元を抑える。
悔しいんじゃない。今の私は抑えてるの、怒りじゃなくって。でもさ、その抑えてたの、もう限界なんですわ。焦る気持ちを逆にこうしてしまおう!というアイデアに変えて。
顔を上げた。直哉は勝ち誇ったような表情をしてて。
そのまま私は彼の和装に──……。
……朝さ。
体調が良いからって、御三家会議中に空腹の音を鳴らしたくないなって思ってさ?
よりによってホットサンドをみっちり悟と食べてるんだよね。食べてる時は最高に美味しかった、上出来だったんだよ、焼き目も良くって!
つわり酷い中で今朝は本当に体調良くて、今だ!腹に詰め込んでおけっ!って。彼もガハハハとか笑いながら「そんなしっかり食べてもどうせ巻き戻しタイム入るっしょ!」とか笑いながら言って、でも食べられる時に食べた方が赤ちゃんに回せる栄養が摂れるよねって肯定してくれて。
ハムチーズにコンビーフ、たまご……野菜と果物のスムージー。しっかりと食べて、サプリメントも飲んでさ…。
何もなければこのまま消化出来ただろうに、精神的にかムカムカしてしまったっていうのもある。胃がもう大暴れよ。