第32章 御三家
「うっわ!そこまで避けられるとかキッツいわぁー!俺、ハルカちゃんに何かしたぁ?ガラスのハートバッキバキに割れてまうわ、そこまで避けられたら……」
『現にこうして部屋に引き込まれてるんですけど?』
「あっそうやった!まあ、警戒心マシマシなのは良いんちゃうの?よく分からんけど。
……でもな?」
にや、と笑う口元と対照的に笑っていない瞳。その向けられた二つの瞳にぞく、とした。
「──悟君には相応しくないなあ、アンタ」
『……はい?』
胸にもやっとする感覚。直接的な悟との関係の否定にキッ、とその瞳を睨む。
「気ぃ強そうだし、男の後ろも歩けそうにない。しつけのなっておらん犬みたいに横…それ以上に前行くタイプやろ?
しかもウチの血ぃをちっとばかし、僅かに引いてるんやろ?春日って」
ははっ、と笑った後に腕を組みながら見下すような冷たい視線を浴びた。
それをただ受け取るんじゃなくてより睨むように僅かに見上げる。男女故の身長差はどうしても埋まらない。
舐めてかかってんだ、女だからってそう甘く見られちゃ困る。例え相手が禪院家の人間だとしても。
私までの憎しみを持って生きてきた人達とは違った、私個人の反抗。
『……男の後ろを歩く、なんて今時硬い考えじゃないですか?』
「いや、ぜーんぜん!悟君の三歩、いや四歩。もっともっと後ろでも歩くような謙虚な女じゃないと五条家の嫁は務まらんっしょ!
なんなら、学生時代にフッてた許嫁の方がアンタより謙虚だったんちゃう?」
『もう籍入れてるんですけど?』
「ンなもん悟君と別れればいいやろ?アンタ頭悪いんか?」
ケタケタと笑って別れる事がさも当たり前みたいに言ってくる。嫌がらせっていうか。
あ゙?と短く声を漏らして嫌がらせを続ける直哉を見る。彼は肩を揺らしへらへら笑いながら続けた。
「春日なんて大昔の禪院の妾で勝手にウチを恨んどる一家じゃ。ハルカちゃんが悟君とこ嫁入りすることで、ただでさえ無下限呪術に六眼まで持ってる五条家のパワーバランスマシマシにしてなーんも良い事無いし。呪術の持ち逃げで栄えて、勝手に絶滅しそうになって御三家のバランス崩して楽しいんか?
ハルカちゃんのルックスはきかん坊寄り、まあ、可愛いとは思うよ?乳もでかいし、いいケツしとる……けど、悟君の好みっちゅうたら違うやろ!」
『……うるさい』