第32章 御三家
そこにはコの字状に並んで座る人達。ほとんどが着物を着ている。空いている箇所が並びでふたつと、離れた場所にひとつ。私達以外にもうひとりが来るみたい。
この時点で伏黒や京都の加茂まで居た。当然の如く、ここは禪院家だから多分禪院家の人達が多く、加茂家と思われる人達は少なく。五条家は悟と私だけだと思う、そこの空いた座布団ふたつの並びかな……。
まあ、伏黒に今回の事について聞いてたしな……聞いていなかったら今回私は不参加だったか、とりあえず適当な服を着てきたかもしれない。そしたら超目立ってたわ。聞いてて良かったよ……。伏黒に視線を送ると小さく会釈したから私からも会釈して。
同じ禪院なら、苗字だって禪院である真希や真依がいるはずなんだけど、禪院家の参加者が多い中であのふたりはこの場には居なかった。開いてるひとつの座布団は違うはず、だって双子がそこに座るはずはないのだし。伏黒は禪院家の血を継いでるとは聞いてるけれど苗字は違くても居るのに、だよ?
そもそもこの場に女性自体が少なく、居ても座布団にすら座らず、壁際で正座してじーっとこっちを見ていたり。伏黒とか居る近くに居るし、どことなく禪院家なんだろうと察して……そういう所を見ると鎹の生きてた時代からあまり変わらないのかな、と思ったり。
座布団は女が座るものではない、とかさあ……。
「ほら、座るよ、こっち」
悟に引かれた手。止まった座布団の上に悟が座り、その隣に私も座る。これ私も座布団に座っても怒られないものかな、と思いつつ。女性ひとりと視線は合ったけれどやっぱりじろじろ見られてるのがどこか緊張感を高めてきて、なんというか首をゆるりと締められるような、胃がきゅう、とするような……。
残りひとつ座布団を空かした時点で真希や真依ではないとは思っていたけれど悟が発した言葉でそれはとある人物が座るべき場所だという事を察した。
「……で、禪院家以外呼ばれたメンツ皆集まってるけどもう始まっても良くない?どうせ直哉ひとり来ないくらい良いでしょ?」
……そこの空いた座布団…直哉、って人がまだ来てないのか。
視線をその空いた場所に、じーっと眺めていると、「フハハハ!」という大きな笑い声。その大きな声を出して笑ってる人に顔を向ければ立派に口髭をピンと横に伸ばした男が悟を見ていた。
よく見れば口髭だけじゃなくて眉もピンとしてたわ…。