第32章 御三家
305.
禪院家へと到着した私達。
悟と一緒に歩いていると視線がこちらに飛んでくるのが分かる。遠くからこっちを見てたり、すれ違った後に背中からの刺さるような視線を感じたり。ここに居る人達はそりゃあ禪院家に属す方々だもの、呼ばれている五条家の一部でも加茂家の人達ではない。
そもそもコンビニ寄ったりのんびりしてっからさ、遅刻とまではいかないけれどギリギリのご到着なんですよねっ!だから先に皆、部屋に集まってるって事でこの辺をうろついてるのは禪院家の日常の中を私達は横切らせて頂いてるって事で……。
ただこっちを見てるだけならまだ良い方で、着物を着た女性達はこそこそとこちらを見ながら耳打ちしていたり。
悟との結婚を反対してるのはてっきり男性だけだと思ってた。男尊女卑っていうし……女性陣はそんなに反対しないものなんじゃないのかなって。けれども、男性よりも女性からの視線の方が鋭い、ような……。
ひそ…ひそひそ……。
『……』
なんとも陰気臭いなあ……。前を行く彼の脇腹をつん、とつつき立ち止まった悟。「どしたの?」と体を傾けてくれたから、そっと耳打ちをする。
『既に洗礼を受けてんだけど』
「……そりゃあそうだよね、ピンポイントでヘイトを向けてる呪術師の血族が来たんだ、それも何代にも渡って呪い続けた家のね。
どんなにオマエが恨んじゃいないって言っても、オマエに流れてる血まではここの家の者を許しちゃいないんだ」
ふう、と小さく息を吐いた悟はにこ、と悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……ジョナサンラッシュ&タイキックしとく?」
『やめなさいね?そこまでは言ってないかんね?』
「ちぇー……とにかくさ。ハルカに原因があるんじゃない、オマエのルーツだからどうしようも出来ないだろ?これはハルカ自身の評価で覆すしかないっちゅう事」
……。
言葉や考えが違うって言っても、ここに至るまでの歴史は嘘をつかない。
じゃあ、しょうがないか……、私の行動次第で認められたり、今のまま進展なく反対されたままだったりするんだ……。やけに納得してそのまま悟の顔をまっすぐに見て静かに頷いた。今すぐにどうこう出来ない問題だしね…。
その突き刺さる警戒の視線を受け入れながら悟と共に移動して。開けられた障子の中、大きな部屋へと到着した。