第32章 御三家
むしろ、学生よりも時間が取られる、ような。硝子の日々の忙しい姿を見ていればそう感じるのは私だけかしら?
私の言葉で目を見開き顔をくしゃ、と悔しそうに歪めてる悟。
「あっそうだった!やだぁ、僕仕事サボりたいっ!ハルカとずっとイチャイチャしてたいっ!」
『はは…サボるなサボるな……』
さっきは食べる気満々だったおやつ。気が変わったらしく、カーフックに引っ掛けたままに膝の上に乗せている私の手に彼は手を重ねてくる。
すりすりと撫でる優しい手付き。暖かくて、手の甲だけじゃなくて繋ぎたいって思って。いつものように指を交互により悟と交わりたい、と手を返し、掌を上にすれば言わずとも絡める指。しっかりと繋がれた手は私の膝の上にある。
「……ねえ、ハルカ。禪院家のヤツらがなんか言ってきたら僕に言って?そしたら僕がオマエを守ってあげるから。
そう……例えば、オマエに悪口を言ったらそいつがハルカに謝るまで殴り続けるからねっ!僕に任せろー!」
ばちんっ!とウインクをして、サングラスの上部から瞳を覗かせる悟。いや、そんなオラオララッシュとかスタンドかよ。
『そんなジョナサンみたいな事言ってないの!私の事は気にしないで悟は会議に集中しなよ~?』
「気になるもん、だって僕の奥さんだよ?五条家の当主を支える妻が他のヤツに悪いこと言われてたらキミ以上に僕はキレます。
相手の顔がアンパンマンみたいに、ケツが黒蟻みたいにふっくらするまでタイキックするかんねっ!」
へんっ!とドヤ顔して言い切った彼。
にぎにぎと繋がれた手を握る。そうすれば、悟も負けずとにぎにぎと握ってきて、交互に握り合ってる。……なにこれ、餅つきか?
『悪い事を言う人が居るか分からないけど…もしもそういう事があるならね?
かばってくれる気持ちはありがと。でも、やるっていっても多少は手加減しなね……?悟はとことんやる時はやっちゃうでしょ?』
「うん、殺っちゃえ☆ニッ●ンとかバーサーカーとか……的な?」
『殺る気満々じゃねえか、そういうの駄目だかんね?人間の残機は常に1やぞ?』
手加減できそうにないけれど、握る手から視線を上げて私を見た彼はうんっ!と嬉しそうに頷いた。