第32章 御三家
……悟に相談も良いけれどまず悟には今回の件を私に伝えなかったというジャッジメントタイムがございますので。しっかりものできちんとした判断の出来る伏黒がここに居るならばとあえての今、判断して欲しいんだ。
『そりゃあさぁ……伏黒は冷静な判断が出来るからでしょ。悟は私に関しては冷静では居られなくなる時がある……、それも暴走でもされたら私じゃ止められないもん』
脳裏に浮かべるは一月の頃のカワグチ組に売られた時の事。傑曰く、あの時止めなければ都内に渓谷が出来る所だった。
ひとりウンウンと頷けば、伏黒もなにか思い当たる事があったのか頷く。
「……まあ、あの人は最強と言える分、暴走を止められる人は限られるからな…」
『でっしょ?私が相談を持ちかけたとしても多分、僕が居れば良いっしょ?で終わるしさ~……解決策になんねえよ?』
「確かに」
小さく頷く伏黒。こうして怪我人の居なくなった医務室で冷静な伏黒、そして私の中に降ろした春日初代の女の鎹とでこそこそと話し合いは始まった。
鎹経由で知り得た事は、鎹の子孫であるヨリという、娘の話。
男尊女卑の禪院家、男を一番と考えるというのならと、考えたのは体を作り変えるという術式を持つ女。
はじめは男を女にする、と聞いたから『……タマでも取るの?』と突っ込めば吹き出して驚く伏黒。その私の口を使って説明するのは鎹。"呪力を込めた式髪を体内に忍ばせ、脳から徐々に女にしていく"という事だった。多分、いきなりボイン!って胸がでかくなるとかじゃなくて、徐々に女らしい体型とか仕草になっていく、ホルモンとかそういうのを弄っていくって事かなあ……。
領域内の他の人を探せば染色体でも書き換えるような事しでかすやつも埋もれてるだろうな、とは思うけれど…。
……鎹が何か言い淀むような、隠し事をしてる気も感じたけれど。
とりあえずはそれを聞いて、嫌がらせをする男性が女性化する最悪な絵面となる会議会場って未来にならなければ良いな……と互いに頷きあい、任務終わりの怪我を負った呪術師がやってきた事により、医務室の秘密の会議はそこでお開きとなった。