第32章 御三家
「……おい、どうした?」
『"小娘、目の前に居るのは禪院の血の、"』
そこまで口を借りられた所で口をばっ!と抑える。
──鎹。今私の目の前に居るのは確かに禪院の血を継ぎ、鎹も使う玉犬含む十種影法術を相伝している呪術師だけれど。決して傷を付けてはいけない。
それをしっかりと彼女に教え込み、渋々了解したのを確認してから口から手を離して。
「……」
……訝しげに見ている伏黒だけど。
以前よりはいくらか話が出来るようになった鎹。仕方なくっぽいけど納得して貰い、鎹が居る状態で話を進める。
『……今ね、先祖の鎹降ろしてんだけど…』
「おいおい…目の前に俺居るのに大丈夫かよ…」
『抑えています、てか伏黒に手を出すなとは言ってあるからさぁ…。
で、多分だけどずっと春日の一族が禪院を呪い続けてたっていうのなら、遠巻きから呪うんじゃなくなにか直接なり危害を与える方法があったんじゃないのかなって。そういうので過度な嫌がらせの対抗策を練ろうかなと』
片手で指先を立て、鎹なり誰かがアイディアを持ってるんだろ?と話させようとしてみた。
きっと、直接コンタクトした際に痛めつけたり、殺したり出来るようになにかを温めているのには違いないハズ。永遠に術者(春日家)に近付けない禪院家のランニングマンが見れたりとか!それは悟側の術式か!
「……それを何故、俺の目の前で言わせようとしてんだよ…?」
それは確かに、何故禪院を傷付ける方法を悟ではなく伏黒の前で言わせるかって事だけどさ。
御三家会議をするに至って、禪院家に他の家の者が行かなくてはいけない。その際に特に私に至ってはイレギュラーな存在。春日家ってのは加茂家はともかく禪院に関しては水と油、ハブとマングース、グラードンとカイオーガ、きのこの山とたけのこの里…だ。
最悪の事態にも備え、反撃なり、脅しになるようなものを持っているならここで引き出しておきたかった。そしてそれが正しいのか、私以外の意見を聞きたくて。