第2章 視界から呪いへの鎹
階段を数歩互いに上がった所、その体勢のままでこちらを振り返る悟。面白がっている顔だった。
「キミ、明日バイト休みだろ?じゃあ今日の仕切り直しに今日、行ったカフェでお昼に待ち合わせな?」
『なんでそれ知ってんの……というか、話なんて今日、十分したんじゃ…、』
「……よーし、お部屋訪問しようっかな~?」
『行きます!行けば良いんでしょ、行けば!』
その返事を待ってたと言わんばかりににっこにこの顔で、悟は狭い階段ですれ違う。
その時に肩に手を置いて、耳元で囁いた。
「来ないと後悔する事になるぜ?といっても、いずれは僕に会わざる負えなくなるかもって事だけれど」
意味深な事を言い残し、じゃあね、と手を振る悟に、仕方なく軽く手を挙げる程度に挨拶をして、我が家に上がりこんだ嵐がようやく去った。
『……はぁー…、ったく…、今からご飯作るよ、父ちゃん』
やけに上機嫌そうな父は、甘いお菓子からビールに切り替えて晩酌をしていて。
だらんと座って、グラスの発泡酒をぐびりと飲んでタン、とグラスを置く。
「お前にしてはなかなか綺麗めの、お喋りな男引っ掛けたな?だからおそろいで白くしたのか、お前は。ッカー!熱いね~」
『……は?』
「彼氏にくらい、パンツ見られても良いんじゃないのか~?へっへっへ、父ちゃんが母ちゃんと付き合ってた頃はなー、」
『のろけも大概にしてっ!誰があんなのを彼氏にするかっバカ親父っ!父ちゃんの夕飯は梅干し、以上!』
めちゃくちゃ謝る父に絡まれながら、腕を組んで考える。
ああ、明日バックレたい……と。