第31章 灰色の日々
空白はこれから埋めれば良い。だから、嬉しいことは彼と一緒に共有していきたい。
丸く口を開け、驚いた顔から嬉しそうな表情で「やった!」と無邪気に私の挟んだ手をぶんぶん上下に振って悟は喜んだ。
「……うん。うん、うん!ありがとう、僕も一緒に行くっ!ハルカと一緒にお腹の子の成長を見たいんだ!」
ぱっ!と私の手が離された後に飛びつくように抱きしめられてぐりぐりと顔を擦り付ける悟。髪がくすぐったくて彼の腕を掴みばたばたと軽く暴れる。
犬か…?飛びついた犬だこれ!もふもふとした髪が彼をそう思わせるっていうか。
ぐりぐり摺りつくのを止めて今度はくすくす笑いながら彼はただ静かに私をぎゅっと抱き寄せた。その彼に私も腕を伸ばして私も寮の部屋内でするように抱き寄せて。
互いが座って抱き寄せ合えばあったかい。この温もりが、彼の香りを全身で感じるこの時間が私の今の幸せ。ああ、私は今、幸せに満たされてるんだ……。
静かにふたり抱き寄せ合う中で、新幹線は高速で日常に戻るための東京方面へと私達を運んでいった。