第31章 灰色の日々
『ねえ、悟。来週のさ、水曜日に定期検診行こうかなって思ってるから、なるべく任務入れないようにね?』
蕩けそうな(いや既に蕩けてる)表情の悟が、がばっ!と背筋を伸ばし「えっ」とその表情が引き締まる。なんか用事入ってたのかな…。それなら別の日にするけれど…。
彼はさっきまで頬を撫でてた私の手をぎゅっと掴み、もう片手を使って包み込む。そしてこちらに顔を寄せてきた。勢いが良すぎて、どんなにキスに慣れてしまっていても退けざる負えない。あまりにもがっつき過ぎな行動にちょっと彼から身を引いた。
「えっ!?来週の検診、僕行って良いの!?」
『え…、うんいいよ?流石に傑さんに頼んだら悟も相当ヘコむし、しばらく引きずるでしょうし』
リアタイでエケチャン見れなかった!傑は見れて僕が見れないってどういう極刑だよ!とか部屋で壁に頭突きしながら叫びそうっていうか。
オーバーリアクションで二度大きく頷く悟は私ににっこりと笑いかけてる。
「そりゃあヘコむね~…熱したアルミ缶の実験の如くベッコベコだよ~?」
『でんじろうワールドで急に例えてくんな…』
この人、調子に乗ってきてんな?
甘やかしすぎないようにしたいけれど私も彼も楽しみにしてるふたりの間に出来た初めての子だから、この一回一回の成長を確認する時が大切な時間なんだと考えたらあまり残酷なことは出来ない。私だって喜びは一緒に分かち合いたいのだし。
また軽薄な状態にならないようにじっとその目元を見上げてゆっくりとした口調で言い聞かせた。
『マジで今回は特別に罰としてのお留守番はナシにする。いい?今回は、特別に、だよ?特別に。だから、来週…、九週目の様子を悟も一緒に確認するんだからね?』