第31章 灰色の日々
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京都滞在は今日まで。
昨日までは午前中は主に教室で新と共に座学を、午後は高専内を散歩しつつ医務室に行くなどの学校生活をしていたけれど悟が来てからの三日間は、まあたったの三日程度じゃ二週間の海外出張と三週間近くの呪物破壊ツアーの心にぽっかり空いた空白を埋めるには少なすぎてさ。彼は任務以外の多くの時間を私の側に居て私も悟も互いに、寂しさを埋めるようにずっとずっと側で過ごしてくれた。
以前の私であれば多忙な悟の時間を私ひとりに縛ってしまうのは……という遠慮もあったけれど、今回逢えなかった期間があまりにも長すぎた。二週間と三週間の間に僅か数時間だよ?ほぼ5週間と見ていいくらいの寂しさだもん。今回はめいいっぱいに、普段の悟のようにべたべたと彼にひっついてたのは私だった。
「もお、くっつきすぎじゃない?」と笑い声交じりに満更でもない悟。『誰のせいかな?』と一言愚痴れば「僕のせいでした!」とこうなった理由を知る彼は謝りながらへらへらと笑う。
まるで充電するみたいにぴったりとしがみつけば、磁石のようにより強固にくっつこうとする悟。私がこんな状態であればもっと寂しんぼな彼はその上をいく懐きすぎた子犬のように抱きしめてくれる悟に嬉しくなって互いにそうくっついていればあっという間に寝る時間、なんて日が続いた。
そう、時間が足りないって話。
京都での悟との合流から東京に帰る日までの三日間程度じゃ、放課後ご飯を一緒に作って家事をして、抱きつきあって、お風呂入ってまた抱きつきあって寝て……の繰り返し程度で、まだまだ空白が埋めきれず東京に帰っても寂しさが埋まるまでは側に居たい、居て欲しい……。
そうなれば、あまり京都に未練もなく東京に帰る準備はさっさと終わってしまうもので。
荷物を纏めた私と、その荷物も持ったアイマスクをした悟。駅で見送りに来た私服の歌姫が「ほら、荷物持ち」と、悟に紙袋をひとつ追加した。
ガサ、とその紙袋の中身を確認する悟。ウキウキとしていたのも束の間、紙袋を覗きながら下唇を出し不服な表情を顔全体に出してる。
「ちょっと歌姫ー、僕もハルカもお酒は無理なんですけど?」
『ノンノン、それ硝子さんにだよ、私や悟のじゃないから』
歌姫が渡してきた紙袋の中にはお酒が一本。丁寧に梱包されているもの。
袋の中身をまじまじとまた見た悟はへの字口をしてる。