第31章 灰色の日々
『……いつも悟、言ってるじゃん。自分で言うのも恥ずかしいけどさ。私の事……大事な奥さんだって。一緒にご飯作るから待ってて、すぐ戻るって出掛けて連絡もなくそのまま三週間なんて、あまりにも酷いでしょ…』
「ハルカ……。もう、こんな事、二度としないから。誓うよ、キミに悲しい想いをさせないって。だから、ハルカ、ねえ」
定食が来たのは良いよ。本来ならコロッケの揚げたての香りが美味しそうだって、ソースを掛けてサクッ!と食べていたい所。
店内の様々な料理と、妙に人が多くて熱い店内。そして悲しくて少ししゃくりあげてたっていうのと……気分の悪さが見事にマッチした。手のひらを返すような具合の悪化。どうやら吐き気と見事エンカウントしちゃったみたい。
涙声を隠そうとしてた手は今度は違う意味での抑えに変わる。……ここでやったらヤバイ。私の胃、なんとか落ち着いて…!
頭を若干下げている私の頭上で、テンションの低い彼の声が続く。
「ハルカを守りたくて任務に走ってた。その大事なオマエを良く見ないでこんなに悲しい思いをさせてたなんて、知らなかった。外敵から守ろうとして、オマエの心は守ってあげられてなかったんだね、僕。
後で連絡をしようなんて考えて結局しないで今更帰ってきて…都合の良い事ばっかり並べてごめん。
……来週さ、傑に定期検診、付き合って貰いな。それでハルカが許してくれるなら、我慢する。だから、許さなくても、僕の事嫌いだとか分かれたいとか…そういう風に思わないで。僕はハルカの事が大好きだ、愛してるから今、弱ってるオマエを手放したくない」
『……』
ぎゅっと抑えて我慢する。嬉しい事も言ってくれてるけれど別の意味で涙が出そう。
今、一言でも口を開いたら第一声と共にコーヒーとコメチキが飛び出す。やあ!なんてもんじゃない、フレッシュゾンビ状態でのご対面なんてマジ勘弁。ここは食事をする場所だからなんとか抑え込まないと。
必死に抑え、呼吸をしようにもさっきまでは平気だった匂いが無理。油をたっぷり含んだだろうパン粉だとか、それに触れてむわ…、と立ち上るキャベツの千切りですらも牙を剥いてる。
それから宴会席の追加注文?シーフード定食かなんかかな?めっちゃこっちまで匂いが漂ってくるんですけど!なにこの匂いで吐き気を催すトライアングルフォーメーションは!