第31章 灰色の日々
『来週傑さんに産婦人科付き合ってもらお』
「ごめんて!ちょっとふざけちゃったね、ちょっぴり僕も真面目になるからっ!切り替えるからっ!だから赤ちゃんの様子リアタイ鑑賞させてっ!」
『悟のちょっぴり真面目になる、は1ミクロン程度でしょ!ンなもん反省って言わねえわっ!』
「やー!」
泣きそうな口元で必死に私の手を掴んでゴネる。そう言われてもやらかした事に反省されてないようですし?いたずらしまくって怒られてもドヤ顔してるお留守番が出来なかったわんこみたいに、やらかした事を誇ってるみたいですし??
……その任務は本当にやった事なのか、信用するのは今は置いておき。
ふん、と悟から顔を反らしてると目の前に注文した定食が置かれる。トレイに揃った状態での配膳だった。注文したものを置いてすぐに厨房へと帰っていくスタッフ……うん、忙しそうで少し大きな声で揉めてる私達は大して気にならないみたいだね。
店内は人が居るから、私も声量に気をつけて目の前の悟をじっと見る。こちとら真剣だよ。ふざけてるわけじゃないの。
『いい?急に居なくなって連絡もなく三週間の空白の後に、都合よく自分がしたい事が出来るなんて思わないで。
連絡もなく、悟に連絡を私から取ろうにも出来ないこっちとしては悟がどれだけ最強だとか言っても心配したし、不安だったんだよ?』
少しへらへらしてた彼の表情は話を聞く態度へと変わっていく。
目の前の彼が小さく頷くとふさっ、と彼の白髪が揺れた。少し俯いてて怒られてる子供のようにも見えるけれどそうは身長と見た目が赦さない。
「──ごめん」
彼なりに少しは反省してるんだ……。
真剣な悟を見ながらに私は出来たてで運ばれたてな料理に手を着けずそのまま続けた。
『正直、マジでぶん殴りたいくらいに怒ってるからね?連絡もなく消えた不安にどうせどこかで任務してるんでしょって何も知らず残された私に連絡してくれない腹立たしさと、つわりも酷くて、寂しくて……』
……本当に、本当に寂しかったんだよ。
涙声になりかけて手で口元を抑える。少し潤む視界に悟が一瞬なにか良い掛け、ハンカチをそっと差し出すけれど首を振ってそれを拒絶した。