第5章 "好き"が止まらない!
引っ張る服は離されて、速歩きで進む悟に小走りで私は駆け寄る。身長も高いけれどムカつくことに脚も長い為に一歩の幅が大きいのだ。神はあらゆる物を悟に与えてる。唯一性格だけは与えられていないけれど、と鼻でふすんと笑うと、悟が振り返ったので私はそっぽを向いた。
「今なんか失礼な事考えて無かった?」
『べっ、べべ別にー……ああ、そうだ。
制服ってカスタマイズ出来るって聞いたんだけれど、私動きやすさを重視してズボンとかハーフパンツとかその辺りと、上は寒くならないやつが良いです。学ランとかスーツみたいなのって言えば分かる?』
失礼な事考えてる時に限って悟は勘が鋭いな、と時々思う。時々、ね?
教室を去る前の教材と制服という単語を耳にしたので私は制服のデザインについてを悟に相談する事にした。きっと制服は作るのに時間が掛かるだろうし。カスタマイズ出来るなら量産品じゃないなら早めに相談すべきだし。
何人も居るデスクが並ぶ室内…職員室。そこに辿り着いた悟と私。
悟は一度口元を一文字にし、にっこりと笑った。
「……もうデザイン提出しちゃってるし、完成もしちった☆はい、ハルカ専用の制服です!」
『そういう所ーっ!』
ガサッ!と音を立てて紙袋の取っ手を持ち、私へと突き出す悟。それを受け取り中を覗こうとした所で今度は何冊も重なった教科書の束をポンポン差し出すので、紙袋の中を確認出来ず手首に袋の取っ手を通して教科書を両手で持った。
これも生きる為。ちゃんと学習してお金を稼いで銀座で寿司を食べるんだ、いつかは。一番上の国語の教科書の表紙を見つめた。高校時代の知識身についてるよね、不安になってきた。
「ハルカもさ、一年の仲間入りって事で近々親睦会ってか歓迎会として夕食を皆で食べようかと思うんだけれど何食べたい?」
私に渡し終えた悟は片手をポケットに入れ、職員室から立ち去ろうとするので私は着いていく。
室内から出ればドアは締めてくれた。
……何食べたい、か。さっき食べたいもの丁度良く考えてたわ。
『ザギンの回らない寿司』
「いいよー、後で予約しとくねー。えっと、明日は僕用事あるから明後日辺りにでも…──」
即答か、と突っ込む前に明後日という言葉に私はぴくっ、と反応した。