第31章 灰色の日々
彼を責めながらも、さっきコメダで唐揚げ食べて早い夕飯にコロッケはねえわ…と、注文してから今になって誤ちに気が付く。やっちまったわ、揚げ物続きとか大丈夫かな、これ。
その失敗に対してのため息をつき、悟をじっと見た。追撃するように『どうなの?』って。
シャリシャリ…、と後頭部の短い髪の部分を掻いてる悟。面倒くさいって思ってるな?面倒くさいだろうがなんだろうが、はっきりと私は聞きたいの。彼から目を離さない。
「……オマエさー、ヤタベの尋問を無理矢理させられたろ?呪物作ってた呪詛師のヤタベ。伊地知が断りきれなくて、ひとりでやらされそうな所、僕の代わりに憂太が付き添ってくれたっていう……、」
ひとつ、大きく頷いた。あれが悟が居ない間で一番ヤバイかもって思った件だったから。
悟は声を潜めて少し私側に顔を寄せる。テーブルを挟んだ目の前の彼がまるでキスでも迫ってるみたいな光景に周囲からの視線を感じる。
だからこそあえて横顔を見せ、耳に手を当てて内緒話をさせた。
私の耳にぼそぼそと悟は告げる、これまでの日々を。
「海外出張から帰ってハルカに尋問についてを聞いた時、僕は急いで上層部にクレームしに行ったの。僕の妻はまだ安定期に入ってない妊婦なんだ、その母体に過度なストレスの掛かる任務は与えんなってね。結果、クソジジイ共の歯切れの悪い返事で腹が立ったさ……。反省はしてなさそうだった。
それからそのまま僕は部屋に帰らず、オマエが尋問をした男に重ねて尋問をしたの。それで高専共有ファイルの情報と合致してるのを確認して、そこから上がってる情報の個数……全てのコトリバコ。それをこの三週間、探しては破壊して回ってたのよ」
『……はい?』
……全て?ヤタベが言ってたコトリバコの個数、いくつあると思ってんの?
とても一人じゃやり遂げられなだろう個数をなんとなくで思い出す。イッポウとかニホウとか、そういったタイプ別の全ての個数は覚えてないけどさ?百あるかどうかの個数だった、ような。
その彼の言葉に驚いて耳を貸してた状態から近すぎる顔を向き、悟の勝ち誇ったような口元を見る。
彼が口元に手を当て「ほら、ナイショ話の続き!」というので耳を貸して。