第31章 灰色の日々
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その定食屋の歴史を感じる暖簾を潜れば、先客達でがやがやと賑わう店内が。ご飯には少し早い時間帯だけどどうやらどこかの会社の宴会でお座敷が埋まってて、テーブル席もぼちぼち埋まってきてる。日中は定食、夜はメニューが居酒屋へと長時間開いてる店舗みたい。
私達はすんなりと入れるけれど、あと二組後からは順番待ち。まだ夕ご飯には早い時間なのにね?人気のお店なんだなぁ……。
「わーお、賑やかだねー。テキトーに入ってみたけど当たりの店舗だったのかな?」
おすすめはなんだろうな?と壁に書かれたたくさんのメニューから、皆が食べてるものを悟の後ろに着いていきながら見渡す。……どうやらカキフライ定食が多いみたい。今の私は食べられる自信がないから人気メニュー以外かなあ…残念。
余所見する私の肩を抱き、悟にリードされて進む。スタッフに案内されてこちらの席です、と奥のお座敷に案内されてそれぞれ靴を脱いだ。お座敷の奥の方に座卓を繋げていない席がいくつか見えて、そっちを案内されて「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」と忙しそうに去っていったスタッフ。
さて、と床を見ればちゃんと靴を揃えながら上がっていた悟。私も自分の靴を上がってから揃えようとしたら隣から伸びる手。悟にさっさと揃えられて、そのまま「ほら、座ろ座ろ!」と急かされてしまった。
賑やかな十人程度の宴会するグループの近くで悟と向かい合って座卓を挟んで座ってさ。悟と対面して、メニューを私側に向けて机にどん、と置く彼はアイマスクを下げ、片手で軽く髪を整えた後にサングラスに切り替えていた。
そのまま文字が反対になったメニュー表をにこにこしながら覗いてる悟。
「わー、色々あるねえ~!何がおすすめなんだろ?」
『皆カキフライ定食?を頼んでるみたいだよ』
……といっても、お隣さん(会社かなんかの集まり)だけの情報だけど。
それを聞いた悟が口をまあるく開けて眉を上げた。
「へー!カキフライ定食かー!じゃあ僕もそれにしよっかな~!キミはどうする?同じにする?」
『……多分飲み込めない反芻するから無理』
それ即ち、リバースなり。
って事でいつか普通に食べられるようになった頃に美味しく頂きたいものです。今は無理です!