第31章 灰色の日々
……別にさ、久しぶりに会ったからといってドラマティックな再会だとかそんなのは求めちゃいないけれど。
ただ、ただ何も言わずに彼が居なくなれば絶対に私が不安になるって悟自身も分かっていただろうに、いつも通りで居る彼の胸には正直に飛び込みたくなんてない。
地面に座る悟のさっきまで立ってた場所に私が立ち、そのまま斜め下でバツが悪そうに口元を歪めて腰を擦ってた手で髪をちょいちょいいじってる悟。
「ドイヒー……けど、うん…僕も悪かったよ……」
しょげてる悟。口元が少し優しく笑ってるけれど、アイマスクの下の眉はきっとハの字になってるって感じてる。
まだまだ急にひとりにされた怒りと悲しみは収まりがつかない。てか僕も悪かったよってなにさ?僕"も"って!
『っふー……も、ね?も…。
まだ反省してねえな?"も"っつってるならまだまだ許せそうもないなー…次はランドスライド行くか?』
さっきは急に動いちゃったけど。しっかりと体をほぐしてからやらないとね?と準備運動と言わんばかりにストレッチを彼の目の前で始めると片手を突き出し頭を左右に振って必死に嫌がってる悟。
「待って、なんでも暴力で解決しようとしないで!
話し合おう?ねっ?ほら、ガラス一枚向こうで京都校の子らも見てるし?僕らがバイオレンスなプレイしてるなんて京都校の中で広まっちゃうよ?デンジャラス五条夫婦だなんて噂、ハルカも嫌でしょ?だからよく考え直そ?ほら、ストップ、ストップ!」
悟が顎でしゃくって指す方向、さっきまで私が座ってた席がガラスを挟んで向こう側に見える。
座ってこっちを見てたメカ丸、それからガラスに額を着けそうなくらいに覗き込んでた三輪。目が合った瞬間にびくっ!と彼女が跳ねた。
……窓に反射する自身の顔がやばかった、と片手で口元を抑えなるべく怖く見えない表情を心がけつつ。三輪達の覗く、鏡にもなった大きなガラスから悟を見下ろす。
「……ごめんっ!」
両膝を歩道のタイルに着き、両手を胸元でタンッ!と音を鳴らすほど勢いよく合わせて必死に謝る悟。その程度で約三週間の空白が許されるとでも思っているの?子供じゃないんだ、大人として心を広く受け止めて許してやれよ、と言われるだろうけど。
今日までの空白の時間をたったの三文字で即許せる人間じゃないし…!
キッ、と悟を見て彼に背を向けた。立ち止まったそのままに。